疾患を疑うポイント
●貧血症状に加え,舌の痛み・四肢のしびれ・年齢に不相応な白髪などを伴うことがある.
●胃切除から5~6年経過した患者に多い.
●明らかな大球性貧血を呈する.
学びのポイント
●ビタミンB12の吸収不全や葉酸の摂取不足が原因で発症する.
●進行すると,貧血のみならず,白血球や血小板も減少する(汎血球減少).
●ビタミンB12薬の筋注や葉酸の内服により貧血はすみやかに改善するので,安易な輸血は避ける.
●維持療法を必要とする例が多いものの,適切な治療が行われれば予後は良好である.
▼定義
ビタミンB12や葉酸の欠乏によるDNA合成障害が原因で,骨髄に巨赤芽球が出現する造血障害.
▼病態
ビタミンB12の吸収過程には多くの因子が関与している(図8-10図).ビタミンB12は肉や乳製品などの動物性食品から摂取される(厳格な菜食主義者ではビタミンB12の摂取不足をきたす).食物中のビタミンB12は蛋白質と結合しており,胃液中の胃酸やペプシンで蛋白質が分解され,遊離したビタミンB12はハプトコリンと結合する(萎縮性胃炎により胃酸やペプシンの分泌が低下すると,ビタミンB12が蛋白質から遊離できなくなる).ハプトコリン-ビタミンB12複合体は十二指腸に運ばれ,膵液の蛋白分解酵素(プロテアーゼ)によりハプトコリンが分解される.再び遊離したビタミンB12は胃壁細胞から分泌された内因子と結合し,回腸末端のcubam受容体から腸上皮細胞に吸収される〔Crohn(クローン)病などの回腸炎症性疾患では内因子-ビタミンB12複合体を吸収できない〕.その後,内因子が分解され,ビタミンB12はトランスコバラミンⅡ(TcⅡ)と結合して組織内に運搬される.このように,各過程の異常が発症につながっている.
細胞内に取り込まれたビタミンB12は,メチルマロニルCoAからサクシニルCoAを合成する酵素のメチルマロニ
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