診療支援
治療

【5】再生不良性貧血
aplastic anemia
山﨑 宏人
(金沢大学附属病院・輸血部准教授)

疾患を疑うポイント

●息切れ,動悸,めまいなどの貧血症状のみで受診することはむしろ少なく,紫斑(あざ),歯肉出血,鼻出血などの出血傾向を伴うことが多い.感染症による発熱を伴うこともある.

●進行が緩徐なために健康診断などで偶然発見されるような慢性型では,血小板減少が先行し,貧血が高度でも自覚症状に乏しいことが多い.

学びのポイント

●医療費助成が受けられる「指定難病」の1つだが,免疫抑制療法や骨髄移植の進歩により治療成績は向上している.

●しかし,染色体・遺伝子異常や特定の細胞表面抗原の発現といった疾患特異的なマーカーが存在しないため,血球減少をきたすほかの疾患との鑑別が難しい.

●診断時には形態学的所見に加え,免疫学的機序の関与を示唆するマーカーも参考にする.

●重症度によって予後や治療方針が異なる.

▼定義

 末梢血のすべての系統の血球減少(汎血球減少)と骨髄の細胞密度の低下(低形成髄)を特徴とする症候群.

▼病態

 なんらかの原因で骨髄の造血幹細胞が減少し,最終的には汎血球減少をきたす「骨髄不全症」.造血幹細胞自体の異常に起因する例もあるが,大部分の患者ではなんらかの免疫学的機序が関与していると考えられている(図8-11).これには,IFN-γやTNF-αなどのサイトカインによる非特異的な造血抑制のほか,骨髄中のなんらかの抗原に反応して増殖したT細胞による正常造血幹細胞への直接的な攻撃が想定されている.

▼疫学

 わが国で1年間に新たに診断される患者数は約1,000人(人口100万人あたり約8人)で,女性にやや多く,男女とも10~20歳代と70~80歳代にピークがある.

▼分類

 成因によって先天性と後天性に分類される(表8-6)が,成人例の大部分は一次性(特発性)である.

▼診断

 Hb 10g/dL未満,好中球1,500/μL未満,血小板10万/μL未満のうち少なくとも2つ以上を満たし,骨髄が

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