診療支援
治療

【4】血球貪食性リンパ組織球症
hemophagocytic lymphohistiocytosis(HLH)
森本 哲
(自治医科大学とちぎ子ども医療センター・小児科教授)

疾患を疑うポイント

●小児~高齢者のいずれの年齢でも発症しうる.

●抗菌薬に反応しない遷延する発熱(38.5℃以上)に伴い,肝脾腫,汎血球減少,播種性血管内凝固,肝逸脱酵素上昇,血球貪食像などの所見を呈する.

学びのポイント

●遺伝性(一次性)と二次性があるが,いずれも基本病態は制御不能の免疫活性化を伴う高サイトカイン血症.

●急速に多臓器不全に陥り致死的となるため,早期の診断と治療が重要.

●診断後は直ちに免疫抑制療法を開始すると伴に,基礎疾患の検索を進める必要がある.

▼定義

‍ 制御不能の免疫活性化に伴う高サイトカイン血症により引き起こされる,持続する発熱を主症状とする,マクロファージによる血球貪食を特徴とした症候群.血球貪食症候群(hemophagocytic syndrome:HPS)と同義である.

▼病態

 一次性では,遺伝的に殺細胞〔細胞傷害性Tリンパ球(cytotoxic T lymphocyte:CTL)およびナチュラルキラー(natural killer:NK)細胞〕に細胞傷害活性の低下がある.その原因のほとんどは,殺細胞に存在する殺細胞因子であるパーフォリン自体,あるいは,パーフォリンを内包する小胞の細胞内輸送または標的細胞への放出の障害である.細胞傷害活性の低下により,ウイルス感染細胞を除去できないばかりでなく,活性化した抗原提示細胞も制御できず,殺細胞は持続した抗原刺激を受ける.また,殺細胞が活性化した殺細胞自身を制御する機構も働かない.結果として,殺細胞はインターフェロン(interferon:IFN)-γや腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor:TNF)-αなどの炎症性サイトカインを多量に分泌し続け,殺細胞自身およびマクロファージを活性化する.活性化したマクロファージからもTNF-αが分泌され,これらの相乗作用により,免疫系は制御不能に活性化し高

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