診療支援
治療

【5】類白血病反応
leukemoid reaction
佐藤 謙
(帝京大学医学部附属溝口病院・第四内科教授)

疾患を疑うポイント

●著明な成熟好中球主体の白血球増多.

●貧血や血小板数の異常は軽微.

●悪性腫瘍や感染症などの基礎疾患の存在.

学びのポイント

●白血病は造血器腫瘍であるのに対して,類白血病反応はなんらかの基礎疾患(感染症や炎症など)による反応性の白血球増多である.

●鑑別を要する疾患として慢性骨髄性白血病や慢性好中球性白血病がある.

▼定義

 白血病以外の原因で著明な好中球を主体とした白血球増多が持続する状態である.桿状核球の増加のほかに,後骨髄球や骨髄球などの幼若白血球の出現を伴うこともある.

▼病態

好中球の体内分布

 好中球は,末梢血液中のほかにも,内皮細胞に接着した状態で存在し,骨髄中にも存在する.それぞれを循環プール,辺縁プール,滞留プールとよび,1:1:10の比率で存在する.末梢血液中に存在する好中球は全好中球の数%に過ぎない.

白血球増多のメカニズム

 好中球増多の機序として,①滞留プールや辺縁プールからの動員,②血液から組織への移行の低下,③産生増加,などがある.好中球の血液への動員や骨髄での産生増加において中心的な役割を担っているのは,顆粒球コロニー刺激因子(granulocyte colony-stimulating factor:G-CSF)である.G-CSFの産生は,基礎疾患による種々のサイトカイン産生により促される.

 類白血病の基礎疾患として代表的なものを表8-21に示す.

 最も多い原因は感染症である.感染症による類白血病反応は死亡率が高い.類白血病反応を伴うClostridioides difficileでは約半数が死亡する.

 悪性腫瘍に伴う類白血病反応は,肺癌や腎癌に多く,悪性腫瘍診断時や診断後後期に起こるが,悪性腫瘍が診断される前にもみられることもある.腫瘍細胞から産生されるG-CSF,顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF),インターロイキン

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