診療支援
治療

1 遺伝性出血性毛細血管拡張症
hereditary hemorrhagic telangiectasia(HHT)
小宮山 雅樹
(大阪市立総合医療センター・脳血管内治療科主任部長)

▼定義

‍ 遺伝性出血性毛細血管拡張症(hereditary hemorrhagic telangiectasia:HHT)は,Osler(オスラー)病Osler-Rendu-Weber(オスラー-ランデュ-ウェーバー)病ともよばれ,臨床的診断基準(表8-30)の4項目(鼻出血,皮膚・粘膜の毛細血管拡張病変,家族歴,臓器の動静脈奇形)を特徴とする遺伝性の全身疾患である.古典的な三徴をいう場合は,前三者を指す.

▼病態

 血管形成や維持に重要なTGF-βシグナル伝達系の遺伝子変異により,毛細血管や細静脈レベルで血管形成異常が起こり,身体のさまざまな部位に毛細血管拡張病変(telangiectasia)動静脈奇形が形成され,その臓器に特徴的な臨床症状を呈する.

▼疫学

 通常,親から常染色体優性遺伝するが,1%程度は,新規変異により罹患する.罹患率は1/5,000~8,000人とされ,発生頻度に男女差や地域差はない.

▼分類

‍ HHT type 1HHT type 2若年性ポリポーシス(juvenile polyposis)-HHT重複症候群(JP-HHT)の3つに分類され,それぞれEndoglinACVRL1SMAD4遺伝子のいずれかの生殖細胞系列の遺伝子変異が認められる.それぞれ遺伝子がコードする正常蛋白の量不足(ハプロ不全)により血管病変が形成される.HHT type 1とtype 2で85~90%を占め,消化管にpolyposisを形成しHHTの症状も呈するJP-HHTの頻度は1~2%である.

▼診断

 HHTの診断は,表8-30の臨床診断基準に沿って行う.遺伝子検査を行っても,遺伝子変異は10%の患者には検出できない.遺伝子変異があればHHTの確診であるが,遺伝子変異が検出されなくても,臨床診断が優先される.特徴的な皮膚・粘膜の毛細血管拡張病変の診断的価値は高く,舌,

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