診療支援
治療

【3】血友病
hemophilia
森下 英理子
(金沢大学教授・医薬保健研究域病態検査学)

疾患を疑うポイント

●ほとんどの患者は男性.

●関節内や筋肉内などの特徴的な深部出血症状を呈し,反復する出血傾向あるいは単回の重篤な出血(頭蓋内出血など)の既往,家族歴を確認することにより,血友病を疑う.

●血液検査では,PT正常,APTT延長を示す.

学びのポイント

●血友病はFⅧあるいはFⅨが量的・質的異常をきたす先天性出血性疾患.

●伴性劣性遺伝なので通常男性にのみ発症し,出血症状は関節内出血や筋肉内出血が特徴的.

●血液検査でPT正常,APTT延長を示し,FⅧあるいはFⅨ活性が低下する.

●出血時の治療の原則は,欠乏しているFⅧ(FⅨ)をできるだけ早期に補充する.

●FⅧ(FⅨ)製剤を反復投与すると,FⅧ(FⅨ)に対する同種抗体(インヒビター)が発生することがある.

▼定義

‍ 血液凝固第Ⅷ因子(factorⅧ:FⅧ)あるいは凝固第Ⅸ因子(factorⅨ:FⅨ)の量的,質的異常による先天性出血性疾患であり,FⅧ欠乏症が血友病A,FⅨ欠乏症が血友病Bである.

▼病態

 X染色体上にあるFⅧあるいはFⅨをコードする遺伝子に変異が生じることで,血中のFⅧ(Ⅸ)活性が低下し,内因系凝固機序の異常をきたす.

▼疫学

 通常は男児のみに発症し,血友病Aの罹患率は男子1万人あたり1人と推測され,血友病Bはその1/5である.女性血友病はきわめてまれ.

▼分類

 凝固因子活性の程度により,1%未満が重症型,1~5%未満が中等症型,5%以上が軽症型と分類される.

▼診断

 血友病に診断基準はなく,図8-37に示したアルゴリズムを参考にして診断する.重要なのは問診と血液検査である.

問診

1)既往歴,家族歴

 出血症状が始めて出現した時期,出血の部位・程度,抜歯や外傷後の止血困難などの既往歴について,確認する.反復する出血症状,単回でも頭蓋内出血などの重篤な出血がある場合は出血性素因を疑う.伴性劣性遺伝形式をとるため,家族歴を

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?