診療支援
治療

【4】高ホモシステイン血症
hyperhomocysteinemia(HHcy)
家子 正裕
(北海道医療大学歯学部教授・内科学)

疾患を疑うポイント

●知的障害,Marfan症候群様体型などの症状を認める場合には,先天性のHHcyを念頭におく.

●原因不明の若年性脳梗塞などの血栓症を認めた際にHHcyを疑う.

学びのポイント

●血中Hcyは遺伝的要因のみならず生活習慣や薬剤でも増加する.

●HHcyは動静脈血栓症や動脈硬化を引き起こす.

●診断は血中ビタミン(vitamin:V)B12・B6や葉酸の低下でスクリーニングし,血中Hcy値やメチオニン値および遺伝子解析で診断する.

●治療は血中Hcyの低下を目的にメチオニン制限食やVB12・B6および葉酸を補充する.

▼定義

 遺伝的および薬剤や疾患などによりアミノ酸の1つであるホモシステイン(homocysteine:Hcy)が高値になり,血栓症などをきたす疾患群.

▼病態

‍ Hcyは必須アミノ酸であるメチオニンの代謝産物である.Hcyの代謝には,VB12および葉酸を補酵素としてメチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(methylenetetrahydrofolate reductase:MTHFR)によりメチオニンに再合成される再メチル化経路と,ビタミンB6を補酵素としてシスタチオニンβ合成酵素(cystathionine β-synthase:CBS)によりシスタチオニンへ変換されるイオウ転移経路がある(図8-46).これに関与する酵素の遺伝的欠損およびVB6,B12,葉酸などの欠乏により高ホモシステイン血症(hyperhomocysteinemia:HHcy)を生じる.また,生活習慣や薬剤などの要因でも血中Hcyは増加する.Hcyはスーパーオキサイドなどを生成することにより血管内皮細胞障害,血管平滑筋細胞増殖,血小板活性化,組織因子の誘導などの凝固亢進状態を引き起こすことが報告されており,HHcyでは動脈硬化や動静脈血栓症が促進される.

▼疫学

 HHcyは全人口の5~7%に

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