尿生化学検査には多数の項目があり,その結果は血液検査結果などと組み合わせて総合的に判断を行う必要がある.尿生化学検査として頻用するものとして尿浸透圧,FENa,尿中アニオンギャップの3つをとりあげる.
➊尿浸透圧
尿浸透圧の基準値は50~1,200mOsm/Lに調節されており,尿細管遠位部での水再吸収の状態を反映しており,抗利尿ホルモン(ADH)の作用で通常決まる.尿浸透圧は通常,尿中のNa,Kによって決定され,さらに糖や尿素窒素なども影響を与える.
尿浸透圧の上昇はADHの分泌時にみられ,血漿浸透圧の増加と有効循環血漿量の減少がADHの分泌刺激となる.また,バソプレシン分泌不適切症候群(syndrome of inappropriate of ADH:SIADH),副腎不全などではこれらに依存しないADHの分泌がみられる.尿浸透圧の上昇は尿中に糖,造影剤,マンニトールなどの浸透圧物質が存在する場合にもみられる〔本章「多尿」の項(→)も参照〕.
尿浸透圧の低下はADHの分泌抑制時にみられ,血漿浸透圧の低下がADHの分泌を抑制する(心因性多飲).またADHの分泌障害(中枢性尿崩症)や反応低下(腎性尿崩症)においても尿浸透圧が低下する.
➋FENa
部分排泄率(fractional excretion:FE)は糸球体でろ過された量に対する尿中へ排泄された量の割合である.FENaは糸球体でろ過されたNaの量に対する尿中へ排泄されたNaの量の割合ということになる.FENa=(尿中Na×血清Cr)/(血清Na×尿中Cr)×100で計算される.
FENaは腎前性のAKIでは,尿中Naの再吸収の亢進を反映し一般に1%以下になり,腎性のAKIでは2%以上となる.ただし,腎性のAKIでも急性糸球体腎炎,造影剤腎症,横紋筋融解症による急性尿細管壊死などではFENaが1%以下となり,また腎前性のA
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