▼浮腫はNaの貯留
浮腫は水の貯留ではなく,Na(=等張液)の貯留である.これに対して水の貯留は低Na血症である(図9-8図).診察上明らかな浮腫があれば,およそ3~4kgの体液貯留があるとされる.これは生理食塩液薬が4L貯留しているイメージで理解するとよい(図9-9図).ここから治療には塩分制限と利尿薬が必要であることが理解できる.
▼圧痕浮腫と非圧痕浮腫
浮腫を診るにあたり一般的な部位は,脛骨前面である.浮腫の部分を指で5~15秒圧迫したのち指を離して陥凹ができる場合を圧痕浮腫(pitting edema),陥凹が残らない場合を非圧痕浮腫(non pitting edema)という.静脈うっ滞が原因の浮腫では,原則として圧痕浮腫を呈する.リンパ浮腫や甲状腺機能低下症に伴う浮腫は非圧痕浮腫となる.
▼体液過剰の身体所見による評価
➊浮腫と体重変化
体重増加は最も簡便な体液過剰の指標である.短期間であれば十分正確である.
➋全身性浮腫
浮腫の鑑別診断には分布をみる.心不全,肝硬変,腎疾患(腎不全,ネフローゼ症候群),甲状腺機能低下症では全身性浮腫,あるいは両側性浮腫を示す.
➌限局性浮腫
主な原因は蜂窩織炎,リンパ浮腫,深部静脈血栓である.静脈やリンパ管が中枢側で通過障害を起こすと末梢側に浮腫が出現する.例えば,下肢の深部静脈血栓症による下肢浮腫,乳癌の術後の上肢リンパ浮腫などがその代表例である.
➍浮腫の分布
体液貯留による浮腫では,原則として重力のかかる部分により多く起こる.したがって,歩行や坐位が可能な患者では足から下腿に浮腫が強くみられる.しかし高齢者で寝たきりの患者では,浮腫は必ずしも下腿に現れず,体幹の背側や仙骨部などで強くなる.仰臥位の患者を前から診察しただけでは見逃すことがある.背部に手を回したり,介助者とともに患者を側臥位にして診察すべきである.