診療支援
治療

【2】急性腎障害の遷延と慢性腎臓病
persistent AKI and CKD (progression)
森 慶太
(京都大学大学院メディカルイノベーションセンター)
柳田 素子
(京都大学大学院教授・腎臓内科学)

疾患を疑うポイント

●AKIの診断・治療にもかかわらず,2日以上経過しても腎機能や尿量が改善しない.

●CKD,高齢,糖尿病の存在がAKIの遷延のリスクとなる.

▼定義

 近年国際ワーキンググループにより,適切な介入にもかかわらず急性腎障害(acute kidney injury:AKI)発症48時間以上(2日以上)持続した状態がAKI遷延であると定義された.なお,90日以上持続すれば,慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)に該当するが,AKI発症から7日以上遷延し,90日未満の状態を急性腎臓病(acute kidney disease:AKD)とする分類も提唱されている.

▼病態

 AKI遷延の背景にはさまざまな原因による尿細管壊死が存在することが多い.腎臓には自己修復機構があり,障害後に残存尿細管が増殖し組織修復が行われる.しかし,尿細管の増殖・修復能力は完全ではないため,強い障害後には腎臓は萎縮し,CKD化する.また,高齢者においては,障害をきっかけに生じる炎症が遷延し,腎機能障害が持続しやすい.

▼疫学

 AKIの定義・患者背景が多彩であるため,AKI遷延の頻度に関する詳細は不明な点が多い.2010年に米国から報告された研究報告によると,非心血管手術を受けた平均66歳の糖尿病患者においてAKIの発症率は17.8%であったのに対し,3日以上遷延するAKIの発症率は5.8%であった.また,高齢者やCKD・糖尿病の存在はAKI遷延を生じやすい.

▼診断

 AKIの診断自体については本章「急性腎障害の病態,診断,治療」の項()を参照すること.脱水・低血圧(腎前性),腎毒性のある薬剤の投与(腎性)や尿路閉塞(腎後性)が存在する場合にはこれらに対して輸液,薬剤中止,泌尿器科学的介入(尿道バルーン留置,尿管ステント留置など)を行う.それら介入にもかかわらず2日以上AKI

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