診療支援
治療

3 膜性腎症
membranous nephropathy(MN)
丸山 彰一
(名古屋大学大学院教授・腎臓内科学)

疾患を疑うポイント

●緩徐に進行する高度蛋白尿と浮腫を有する中高年者をみたら,膜性腎症を第一に疑う.

学びのポイント

●中高年の一次性ネフローゼ症候群の原因としては最も多い疾患.

●抗原抗体反応から形成された免疫複合体が糸球体基底膜に沈着することで惹起される.

●主たる原因抗原はホスホリパーゼA2受容体(PLA2R)である.

▼定義

 抗原・抗体・補体成分からなる免疫複合体が糸球体基底膜に沈着し,糸球体上皮細胞(ポドサイト)障害から蛋白尿をきたす糸球体疾患である.

▼病態

‍ 一次性膜性腎症(MN)の主たる原因抗原はホスホリパーゼA2受容体(PLA2R)である.血清中のPLA2R抗体濃度が高いと治療に反応しにくい.その他の責任抗原としてトロンボスポンジン1型ドメイン含有7A(THSD7A)がある.いずれもポドサイトに発現する膜蛋白質である.MN以外の患者にPLA2R抗体やTHSD7A抗体が検出された報告はなく,特異度はきわめて高い.

 自己抗原反応性のIgGが糸球体基底膜を通過し上皮下(基底膜の外側)でポドサイト由来の蛋白質と結合することで補体が活性化され,その結果ポドサイトが傷害される(図9-42).その結果,高度な蛋白尿とこれに伴う低蛋白血症や浮腫が惹起される.自己抗体のIgGサブクラスの大部分はIgG4である.なぜ自己抗体が産生されるのか,補体活性化能が低いIgG4がどうやってポドサイトを傷害するのか,病態には依然不明な点が多い.

 二次性MNには,全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)やSjögren(シェーグレン)症候群のような自己免疫疾患,B型肝炎,梅毒,マラリアといった感染症,金製剤やブシラミンなどの抗リウマチ薬,各種の悪性腫瘍,骨髄移植後の移植片対宿主病(graft-versus-host disease:GVHD)や腎移植

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