疾患を疑うポイント
●緩徐に進行する高度蛋白尿と浮腫を有する中高年者をみたら,膜性腎症を第一に疑う.
学びのポイント
●中高年の一次性ネフローゼ症候群の原因としては最も多い疾患.
●抗原抗体反応から形成された免疫複合体が糸球体基底膜に沈着することで惹起される.
●主たる原因抗原はホスホリパーゼA2受容体(PLA2R)である.
▼定義
抗原・抗体・補体成分からなる免疫複合体が糸球体基底膜に沈着し,糸球体上皮細胞(ポドサイト)障害から蛋白尿をきたす糸球体疾患である.
▼病態
一次性膜性腎症(MN)の主たる原因抗原はホスホリパーゼA2受容体(PLA2R)である.血清中のPLA2R抗体濃度が高いと治療に反応しにくい.その他の責任抗原としてトロンボスポンジン1型ドメイン含有7A(THSD7A)がある.いずれもポドサイトに発現する膜蛋白質である.MN以外の患者にPLA2R抗体やTHSD7A抗体が検出された報告はなく,特異度はきわめて高い.
自己抗原反応性のIgGが糸球体基底膜を通過し上皮下(基底膜の外側)でポドサイト由来の蛋白質と結合することで補体が活性化され,その結果ポドサイトが傷害される(図9-42図).その結果,高度な蛋白尿とこれに伴う低蛋白血症や浮腫が惹起される.自己抗体のIgGサブクラスの大部分はIgG4である.なぜ自己抗体が産生されるのか,補体活性化能が低いIgG4がどうやってポドサイトを傷害するのか,病態には依然不明な点が多い.
二次性MNには,全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)やSjögren(シェーグレン)症候群のような自己免疫疾患,B型肝炎,梅毒,マラリアといった感染症,金製剤やブシラミン薬などの抗リウマチ薬,各種の悪性腫瘍,骨髄移植後の移植片対宿主病(graft-versus-host disease:GVHD)や腎移植
関連リンク
- 治療薬マニュアル2023/ブシラミン《リマチル》
- 治療薬マニュアル2024/ブシラミン《リマチル》
- 治療薬マニュアル2024/エゼチミブ《ゼチーア》
- 治療薬マニュアル2024/(合剤)エゼチミブ・アトルバスタチンカルシウム水和物配合剤《アトーゼット》
- 治療薬マニュアル2024/(合剤)エゼチミブ・ロスバスタチンカルシウム配合剤《ロスーゼット》
- 治療薬マニュアル2024/シクロスポリン《サンディミュン》
- 治療薬マニュアル2024/シクロスポリン《ネオーラル シクロスポリン》
- 臨床検査データブック 2023-2024/抗好中球細胞質抗体〔ANCA〕 細胞質性抗好中球細胞質抗体〔PR3-ANCA,c-ANCA〕 [保] 259点
- 臨床検査データブック 2023-2024/抗糸球体基底膜抗体〔抗GBM抗体〕 [保] 262点
- 新臨床内科学 第10版/2 急速進行性糸球体腎炎症候群
- 新臨床内科学 第10版/2 巣状分節性糸球体硬化症
- 新臨床内科学 第10版/2 アミロイドーシス
- 新臨床内科学 第10版/4 膜性増殖性糸球体腎炎
- 新臨床内科学 第10版/4 抗糸球体基底膜(GBM)病
- 新臨床内科学 第10版/3 全身性エリテマトーデス
- 今日の小児治療指針 第17版/膜性増殖性糸球体腎炎
- 今日の小児治療指針 第17版/急速進行性糸球体腎炎
- 今日の小児治療指針 第17版/巣状分節性糸球体硬化症