学びのポイント
●圧倒的に心房細動からの塞栓性閉塞が多い.
●急な側腹部痛・背部痛がある患者に心房細動があれば必ず鑑別診断に入れるべき疾患.
●慢性に経過し,腎臓が萎縮してからでは治療はできないので,早期の診断が必要である.
▼定義
腎動脈主幹部もしくはその分枝が何らかの原因により閉塞し,虚血・低酸素により腎組織が傷害をうける疾患.
▼病態
心房細動,心弁膜症,虚血性心疾患に併発する塞栓性閉塞による頻度が最も高いが,動脈硬化を基盤とする腎動脈狭窄などに起因することもあり,既往歴・心血管リスクなど臨床的な背景を把握することが重要.急激な側腹部痛,背部痛,悪心・嘔吐などを訴える場合から無症状までさまざまであるが,早期診断・早期治療が重要であるから,尿所見や血液検査で可能性がある場合,必ず鑑別診断に入れる必要がある.診断まで数日かかる例もあり,早めにCT,MRI,レノグラムなどを施行して早期の確定診断を目指すべきである.
▼診断
臨床症状としては,急激な側腹部・腹部・背部痛とそれに伴う悪心・嘔吐・発熱,急激な血圧上昇がある.また必ず確認すべき事項は次の通りである.
①背景因子:心房細動,心弁膜症,心内膜炎,心筋梗塞,心臓手術など,心房・心室内血栓症をきたしやすい項目の有無.
②動脈硬化の危険因子:高血圧,糖尿病,高脂血症,喫煙などの確認.
③感染性心内膜炎,多発性動脈炎,線維筋性異形成,抗リン脂質症候群,コカイン使用歴の確認.
④尿検査所見:肉眼的・顕微鏡的血尿,尿蛋白.
⑤血液検査所見:白血球数増加,LDHの異常高値,レニン活性の上昇,クレアチニン上昇(広範な梗塞の場合).
確定診断をつけるには,造影CT(図9-49図)やガドリニウム造影MRIで楔状の陰影欠損像,レノグラムで腎血流の低下,血管造影での腎動脈血流の途絶を示す.血管造影は侵襲が大きいので,経皮的塞栓除去・血管形成術の適応がある場合に限る
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