診療支援
治療

3 治療薬による腎病変
drug-induced renal injury
廣村 桂樹
(群馬大学大学院教授・腎臓・リウマチ内科学)

▼定義

 膠原病・リウマチ性疾患の診療では治療薬により腎障害をきたすことがしばしばある,特に関節リウマチの治療で使用されることの多い,NSAIDs,疾患修飾性抗リウマチ薬(disease modifying antirheumatic drugs:DMARDs),免疫抑制薬であるカルシニューリン阻害薬(calcineurin inhibitors:CNIs)などが薬剤性腎障害をきたす.

▼病態

 各薬剤と主な腎病変について表9-39に示す.

NSAIDs

 本章「鎮痛薬腎症」の項()参照.

DMARDs

 関節リウマチの治療薬である,金製剤,D-ペニシラミン,ブシラミン膜性腎症をきたすことが知られている.ただしブシラミン以外は最近使用されることがほとんどない.

CNIs

 CNIsであるタクロリムスとシクロスポリンはT細胞の活性化を抑制する薬剤であり,関節リウマチや種々の膠原病・リウマチ性疾患に使用される.CNIsには糸球体の輸入・輸出細動脈を収縮させ腎血流を低下させる作用がある.虚血性腎障害により急性腎障害の原因となるとともに,長期間の投与により慢性尿細管間質性腎炎をきたすことがある.

 また頻度は少ないが,糸球体毛細血管の内皮細胞障害を起こし,二次性の血栓性微小血管症を生じることがある.

▼疫学

 腎専門施設に薬剤性腎障害として入院となる患者のうち,NSAIDsを原因とするものが約1/4を占め最も頻度が高い(リウマチ性疾患の治療以外も含める).ブシラミン投与患者では5%程度に蛋白尿がみられる.

▼診断

 蛋白尿出現や腎機能低下を認めた場合,薬剤性による腎障害の可能性を考慮する.臨床経過などより薬剤性の可能性が高い場合は被疑薬を中止する.中止によって臨床所見が改善した場合は,その薬剤の可能性が高いと判断される.所見が改善しない場合や,ほかの腎疾患との鑑別が必要な場合は腎生検を

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