疾患を疑うポイント
●性感染症に特有の症候
●感染の機会(性的接触)の聴取(問診)
学びのポイント
●性感染症は英語でSTD,STIの2種類の用語がある.どちらも同意である.
●性感染症は患者本人に自覚症状がないまま感染を被っている(保菌,潜伏状態など)場合があり,知らない間にセックスパートナーに感染を及ぼすことも少なくない.そのなかで最も頻度が高いのが,HPV感染やクラミジア(Chlamydia trachomatis)感染である.HPV感染は女性の子宮頸癌の発癌に結びつく(高リスク型の16型や18型)ことや低リスク型(6型や11型など)であっても尖圭コンジローマ(疣贅)をもたらすことがある.クラミジア感染は女性では無自覚保菌から不妊症や,妊娠後の流早産につながる場合がある.
●2013年以降,顕著に梅毒が増加しているが,典型的な皮膚面の第1期,第2期の病巣・症状がある場合と,無症候活動性の潜伏梅毒があり,診断は必ずしも容易ではない.
▼定義
性行為またはそれに準じる濃厚接触によって伝播する感染症.
▼分類
感染症法5類に含まれ,発生動向調査の対象となっている性感染症はHIV感染症/後天性免疫不全症候群(acquired immune deficiency syndrome:AIDS)を除くと,梅毒(細菌である梅毒トレポネーマ:Treponema pallidum sub. pallidumによる),淋菌(Neisseria gonorrhoeae)感染症,性器クラミジア感染症,性器ヘルペスウイルス(HSV:herpes simplex virus-1または2による)感染症,尖圭コンジローマの5種である.このうち,梅毒は診断した医師に保健所への届出義務があるのに対し,ほかの4種は全国約1,000の指定を受けた定点医療機関から報告される毎週の受診者数から発生動向を把握するシステムがある.
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