▼定義
抗がん剤の多くに腎毒性が報告されている.抗がん剤は単独あるいは併用でさまざまな癌治療に使用されており,今後抗がん剤による腎障害が増加すると思われる.抗がん剤の腎障害発症にはそれぞれ特有の機序があるので,発症機序を理解することはその対策を考えるうえでも重要となる.
▼病態
シスプラチン薬薬は急性尿細管壊死を起こし急性腎障害を呈する.また,遠位尿細管から集合管の障害により尿中マグネシウム(Mg)排泄増加,低Mg血症を起こしてくる.シクロホスファミドでは尿細管におけるADH反応性亢進をきたし,水排泄障害,低ナトリウム(Na)血症を起こすことが報告されている.メトトレキサート薬薬は遠位尿細管管腔内で結晶を形成し,その部位の閉塞を起こすことで閉塞性腎不全を起こす.マイトマイシンC薬においては血管内皮細胞の障害による溶血性尿毒症症候群が主であるが,その他メサンギウム細胞障害によるメサンギウム融解などを起こすこともある.ドキソルビシンはラットを用いた研究では微小変化型ネフローゼ症候群から巣状分節性糸球体硬化症類似の腎病変を呈するが,ヒトでの腎障害はきわめてまれである.
▼診断
➊検尿・血液検査による腎機能障害の確認
抗がん剤投与中または投与後に出現してくる尿異常(蛋白尿,血尿,尿沈渣異常),尿量異常(乏尿,多尿),浮腫,高血圧,急性腎障害(血清尿素窒素や血清クレアチニンの上昇),電解質異常(特に低Mg血症など)を診た際には抗がん剤による腎障害を疑う.また,β2ミクログロブリンやNAGの尿中排泄が増加する.特にマイトマイシンCでは溶血性尿毒症症候群(急性腎障害,溶血性貧血,破砕赤血球の出現)の発症を常に念頭におくことが必要である.
➋腎生検による確認
確定診断には腎生検による組織学的検査が必要であるが,個々の癌患者の全身状態,生命予後などを総合的に考慮し判断する必要がある.また癌患者では,
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