▼定義
免疫抑制薬のうち,臨床的に使用頻度の多いものにアザチオプリン薬とシクロスポリン薬薬があるが,アザチオプリンによる腎障害の報告は少ない.一方,移植の免疫抑制薬として汎用されているシクロスポリンは,各種リウマチ性疾患の治療にも広く使われているが,腎障害の発症が最も問題となる.シクロスポリン腎症には急性と慢性の腎毒性がある.急性腎毒性は血中濃度のコントロールを的確に行うことにより減少しつつあるが,シクロスポリンの長期投与で生じうる慢性腎毒性が問題になっている.最近,シクロスポリンと同じカルシニューリン阻害薬であるタクロリムス薬の使用頻度が増えている.タクロリムスによる腎障害はシクロスポリンとほぼ同様であると考えられている.
▼病態
シクロスポリン腎症はさまざまな病型をとるが,腎血流低下と慢性尿細管間質性腎炎が主たる機序であることが多い.急性腎毒性の機序としてはシクロスポリンによる細胞内Caイオン濃度の増加,エンドセリン放出を伴う内皮細胞障害,血管拡張性プロスタグランジンの産生低下などが報告されており,腎病変としては血管,糸球体にはほとんど変化がなく,尿細管病変が主体である.対照的に,慢性腎毒性は輸入細動脈などの血管病変と間質の線維化が主体である.この機序としては持続する内皮細胞障害による慢性血管障害によりネフロンが減少し,過剰ろ過機序などにより細小動脈病変,巣状分節性糸球体硬化症様病変,間質の線維化などが起こるとされているが,詳細不明な点が多い.
▼診断
➊検尿・血液検査による腎機能障害の確認
シクロスポリン薬薬を投与中に,高血圧,血清尿素窒素や血清クレアチニンの上昇,高尿酸血症,高カリウム血症,低Mg血症などがみられる際には,シクロスポリン腎症を疑う.尿細管間質病変では,β2ミクログロブリンやNAGの尿中排泄が増加するので注意が必要である.
➋腎生検による確認
移植腎ではシクロ
関連リンク
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