診療支援
治療

4 静脈洞血栓症
cerebral sinus thrombosis
中瀬 泰然
(秋田大学医学部附属病院・脳卒中包括医療センター・センター長)

疾患を疑うポイント

●比較的急性に進行する頭痛,片麻痺,意識障害,けいれんなどの症状.

●頭部MRIやCTにて動脈灌流領域に一致しない脳梗塞巣の分布や脳浮腫,多発性の脳出血病変を認めるとき.

学びのポイント

●静脈還流障害により頭蓋内圧が亢進するため,脳出血や脳梗塞が生じる.

●血栓傾向を示す基礎疾患や経口避妊薬内服など凝固亢進状態が背景になる場合がある.

●よほどの禁忌事項がないかぎりすみやかな抗凝固薬投与が必要.

▼定義

 脳静脈洞が血栓により閉塞する疾患.

▼病態

 脳静脈還流の阻害により頭蓋内圧が亢進し,脳浮腫が生じる.脳組織圧がさらに高くなると毛細血管系の破綻が生じ脳出血となる.また,動脈血圧より脳組織圧のほうが高くなると脳組織への血液灌流不良となり脳梗塞も生じる.このため静脈還流障害で生じた脳梗塞巣の分布は脳主幹動脈支配領域に一致しない.また脳出血は皮質下出血を呈することが多い.静脈洞血栓化の速度により急速に進行する場合から段階的に進行する場合までもある.

 ATⅢ欠乏症,プロテインC欠乏症,プロテインS欠乏症,抗リン脂質抗体症候群など血液凝固能亢進をきたす疾患が背景要因となる場合がある.妊娠や産褥期,外傷,手術,悪性腫瘍,経口避妊薬服用なども血栓傾向をきたしやすい.また,静脈洞血栓症の12~22%は原因不明といわれている.

▼疫学

 発生率は100万人あたり年3~5人である.頻度は,脳卒中データバンク2015によると99,000例中1.2%となっている.性別では女性対男性が7:3といわれている.平均年齢は40歳以下と報告しているものが多い.

▼分類

 閉塞した静脈洞部位により分類される(図10-22,表10-11).それぞれの閉塞部位により障害される部位が異なるため,出現する臨床症状も違ってくる.

▼診断

臨床症状

 比較的急性に進行する頭痛,片麻痺など神経脱落症状,意識障害,けいれんなど

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