診療支援
治療

4 脊髄出血
spinal hemorrhage
倉石 慶太
(あいちせぼね病院・脊髄外科部長)

疾患を疑うポイント

●好発年齢は40歳以降.

●急性・慢性の経過で脊髄・神経根症状をきたす.

学びのポイント

●出血部位によって硬膜外・硬膜下,くも膜下,髄内に分けられる.硬膜外・硬膜下出血では,血管病変や腫瘍などの原因がない特発性,または軽微な外傷によるものが多い.

●症状が軽症な場合以外は手術による血腫除去が原則.血腫の脊髄神経圧迫により,不可逆的神経障害をきたす前に手術を行うことが望ましい.

●くも膜下・髄内出血は血管病変や腫瘍が原因であることが多く,造影MRIや血管撮影などの詳細な原因検索を要する.

▼定義

 脊柱管内にきたす出血であり,その原因はさまざまである.急性例がほとんどだが,数か月以上の経過で成長する慢性硬膜外血腫も報告されている.

▼分類

硬膜外血腫

1)原因

 外傷性と非外傷性があり,外傷性のものは脊髄外傷の1.7%に合併する.非外傷性硬膜外血腫の原因としては抗凝固・抗血小板薬の内服(10~18%),血管奇形(6~13%),悪性腫瘍,咳・嘔吐,持ち上げる動作があるが,最も多いのは誘因のない特発性(40~50%)である.

2)疫学

 約100万人に1人,男:女=1.4:1,好発年齢47.8歳である.硬膜外占拠性病変の1%未満である.

3)好発部位と出血源

 頻度は頸髄~頸胸髄>胸髄>胸腰髄~腰髄.また硬膜背側に多い.出血源は内腸骨静脈叢,または根動脈硬膜枝である.

4)症状

 背部痛,髄節レベルの根性痛後に進行する運動感覚障害,膀胱直腸障害をきたす.対麻痺,四肢麻痺のみでなく,単麻痺,片麻痺,Brown-Séquard(ブラウン-セカール)型など,さまざまである.

5)画像

 MRIではT1,T2ともに等信号(急性期)→T1,T2低信号(慢性期)と経時的に変化する.CTでは等吸収からやや高吸収域となるが,診断能力はMRIに劣る.

6)治療

 重度の運動麻痺,感覚障害,膀胱直腸障害,または麻痺の改

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