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治療

(6)脳幹脳炎
brainstem encephalitis
郡山 達男
(脳神経センター大田記念病院・病院長)

▼定義

 脳幹部に病変の主座をもつ脳炎の総称であり,感染性と非感染性に大別される.感染性では,ウイルス感染が最も多いが,細菌や寄生虫も原因となりうる.ウイルス感染としては,エンテロウイルス71,単純ヘルペスウイルス(HSV-1およびHSV-2)などが,非感染性のうち免疫性では,Bickerstaff(ビッカースタッフ)脳幹脳炎(Bickerstaff brainstem encephalitis:BBE),Behçet(ベーチェット)病,多発性硬化症,視神経脊髄炎,傍腫瘍性脳幹脳炎などがある.

▼疫学

 わが国における脳幹脳炎の年間発症数は約230名,BBEの年間発症数は約100名と推測され,BBEは脳幹脳炎症例中43%を占めた.BBEは,眼球運動障害と運動失調,意識障害を三主徴とする自己免疫性疾患である.急性進行性に重症化したのちにすみやかに自然回復傾向を示す.6~7割の症例でIgG抗GQ1b抗体が検出される.

▼症状と診断

 感染性では発熱がみられ,顔面・舌下神経麻痺といった脳神経障害の頻度が高く,運動失調,錐体路障害に加えて意識障害を伴う頻度が高い.

 ウイルス感染性では髄液中でPCR法によるウイルス遺伝子の検出,血清および髄液中の特異IgM抗体の検出か,急性期と回復期で特異抗体の4倍以上の有意な上昇を確認する.頭部MRIで脳幹を主体として,小脳,基底核などにも病変を認めることがある.

▼治療

 感染性では病因ウイルスによる脳炎に準じて治療を行う.BBEの治療は,Guillain-Barré(ギラン-バレー)症候群の治療法にならい免疫グロブリン大量療法や単純血漿交換療法が主に用いられている.

トピックス

【ビッカースタッフ脳幹脳炎(BBE)】

 多くの症例でIgG抗GQ1b抗体が検出される.眼球運動を司る脳神経(動眼・滑車・外転神経)や筋紡錘,後根神経節大型細胞にGQ1bガングリオシドが高

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