疾患を疑うポイント
●結核流行地域や免疫能が低下している患者に亜急性経過の髄膜炎が生じたときに強く疑う.
●髄液では単核球優位の細胞増多と糖の低下,蛋白上昇をみるのが典型である.髄液からの塗抹培養検査による菌の証明はしばしば困難であり,高感度PCR法による検出が有用である.
学びのポイント
●発熱と頭痛が亜急性の経過で増悪する患者では結核性髄膜炎を念頭におく.
●病因確定診断(髄液からの結核菌の検出)には時間を要し,しばしば困難である.一方で,結核性髄膜炎は治療の遅れが転帰不良に直結する神経救急疾患であり,結核性髄膜炎と臨床診断したらただちに抗結核薬による治療を開始する.
▼定義
ヒト型結核菌(Mycobacterium tuberculosis)による肉芽腫性髄膜炎である.
▼病態
結核菌感染症はM. tuberculosisによる感染症であり,空気感染(飛沫核感染)形式をとる.肺や胸膜,リンパ節,泌尿生殖器,腸,骨髄などの初期結核病巣から血行性に播種し髄膜炎を呈する.病理では脳脊髄の髄膜は混濁,肥厚し,脳底部に顕著であることから脳底部髄膜炎ともよばれる.
くも膜下腔にリンパ球や形質細胞,巨細胞の浸潤,滲出液貯留,線維芽細胞の増殖が顕著にみられる.この膿性の滲出物によって脳底槽は癒着閉塞し水頭症に至る.軟膜血管も著しく変化し,血管壁に炎症細胞浸潤やそれに伴う肥厚をきたし閉塞性動脈炎を呈する.閉塞性動脈炎は中大脳動脈領域に多くみられ脳梗塞の原因となる.時に頭蓋内にみられる被膜を伴う結節(結核腫)は,組織学的には中心部に乾酪壊死を,周辺部に類上皮細胞やリンパ球,巨細胞を伴う肉芽組織からなる.結核腫の乾酪壊死巣の中心が液状化し結核性膿瘍が形成されることがある.
▼疫学
1999年の結核
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