診療支援
治療

【5】脳膿瘍
brain abscess
高松 和弘
(脳神経センター大田記念病院・脳神経内科)

疾患を疑うポイント

●頭痛,けいれん,局所神経症状(片麻痺,失語症,視野異常)が数日から数週間かけて生じ,頭部CTあるいはMRI検査にて異常所見を認めた場合には発熱の有無にかかわらず本症を疑う.

学びのポイント

●頭痛,けいれん,局所神経症状(片麻痺,失語症,視野障害)が数日から数週間かけて生じる.

●造影MRIでリング状増強効果を呈する疾患との鑑別はMRI拡散強調画像(DWI)が有用.

●脳膿瘍が疑われた場合には可能なかぎり早く抗菌薬を開始.

●膿瘍直径2cm以上,抗菌薬投与後に膿瘍が増大する場合には外科的ドレナージの適応となる.

▼定義

 脳実質内に膿が貯留した状態.

▼病態

 原因は,①乳様突起炎,副鼻腔炎,歯槽膿瘍や頭部・顔面外傷,脳神経外科手術創部感染巣など隣接器官からの直接波及,②細菌性心内膜炎,左右短絡を伴う先天性心疾患,扁桃腺炎などの遠隔感染巣からの血行性播種にて生じる.

▼原因菌

 通常原因菌は嫌気性菌であるが,レンサ球菌,腸内細菌,黄色ブドウ球菌の混合感染のこともある.黄色ブドウ球菌は頭部外傷,脳神経外科手術,心内膜炎後に,腸内細菌は乳様突起炎で多い.免疫不全者(担癌者,免疫抑制薬服用者)では真菌(アスペルギルス)やトキソプラズマが原因となりうる.

▼症状・徴候

‍ 頭蓋内圧亢進による頭痛(75%),発熱(50%),けいれん(15~35%),局所神経症状(60%)(片麻痺,失語症,視野障害)を呈する.症状・徴候は膿瘍の大きさや部位により大きく異なり数日から数週間をかけて出現する.病初期にはこれらの症状・徴候が軽微であるか全くみられない場合もある.発熱,白血球増多は病初期から生じうるが受診時には認められない場合がある.

▼診断

 診断には造影MRIあるいはCT検査が有用で,周辺に比較的広範囲の脳浮腫を伴うリング状の増強効果を示す占拠性病変を呈する.類似のリング状増強効果を呈する疾患(神経

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