診療支援
治療

【8】ライム病
Lyme disease
森田 昭彦
(日本大学准教授・神経内科学)

▼定義

 1970年代に米国のコネチカット州ライム地方で小児に流行した関節炎(ライム関節炎)が,Ixodes属マダニが媒介するBorrelia burgdorferiによる感染症であることが明らかにされたのが始まりである.春から夏にかけての発病が多く,ヨーロッパからアジアにかけての温暖な森林地帯や北アメリカの北東部,北中央部,太平洋沿岸地域など,世界に広く蔓延する人獣共通感染症である〔第11章のも参照〕.

▼病態

 ライム病は全身性の疾患であり,皮膚や関節,循環器,神経などに多様な症候を呈する.第1期(局在期)には媒介するマダニの咬傷周辺に慢性遊走性環状紅斑(erythema chronicum migrans:ECM)がみられライム病に特徴的とされる.このほか,疲労や発熱,悪寒,頭痛,頸部痛,筋肉痛,関節痛などのインフルエンザ様症状を呈する.第2期(播種期)に入ると,Borreliaが血行性

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