疾患を疑うポイント
●小児に多い.
●多巣性の炎症性中枢神経病変により脳症(意識障害,行動異常),てんかんなどを含む急性神経症候を生じる.
学びのポイント
●小児に多い.
●多巣性の中枢神経の炎症性病変に起因する脳症を含む中枢神経イベント,単相性が多いが再発例もある.
▼定義
感染後,ワクチン接種後あるいは特発性に自己免疫機序による脳脊髄の多巣性病変により脳症を含む神経症候を起こす中枢神経の急性炎症性脱髄疾患である.
▼病態
感染後やワクチン接種後の急性散在性脳脊髄炎では病原微生物とミエリンのエピトープに分子相同性があり,これによりT・Bリンパ球が活性化し炎症性サイトカインなど液性免疫も作用し自己免疫の機序で発症すると考えられている.
最近抗ミエリンオリゴデンドロサイト糖蛋白(myelin oligodendrocyte glycoprotein:MOG)抗体陽性例が半数程度あることがわかってきた.
病理学的には,小静脈周囲にマクロファージやリンパ球が浸潤し脱髄巣が形成される.
▼疫学
5~9歳の小児に好発し,男児にやや多い.有病率は0.5/10万人前後である.多くは単相性ながら,時に再発性の症例(multiphasic disseminated encephalomyelitis)がある.
▼分類
原因により,感染後,ワクチン接種後,特発性に分けられる.
▼診断
国際小児多発性硬化症研究グループの2013年版診断基準では,急性散在性脳脊髄炎の診断には以下のすべての項目が必須である.
●初発の多巣性,臨床的中枢神経イベントであり炎症性脱髄病変に基づくと推察される.
●発熱では説明できない脳症.
●発症から3か月以上経過してから新たな臨床およびMRI所見がみられない.
●脳MRIは急性期(3か月)には異常所見がある.
●典型例の脳MRI:びまん性,辺縁不明瞭で大きな(1~2cm以上)病変,主に大脳白質にみ