診療支援
治療

(1)進行麻痺
大谷 良
(国立病院機構京都医療センター・脳神経内科診療科長)

疾患を疑うポイント

●多様な神経精神症状と,Argyll Robertson瞳孔を呈すれば疑うべき.

▼定義

 梅毒トレポネーマの感染が原因の性的感染症である神経梅毒に含まれ,大脳皮質が傷害され,認知症を呈した状態.

▼病態

 実質型神経梅毒は,梅毒トレポネーマに感染後,数年から数十年経過した晩期梅毒の時期に発症する.縮瞳,対光反射消失の一方,近見反射は保持されるArgyll Robertson(アーガイル・ロバートソン)瞳孔が特徴的である.また,大脳皮質,なかでも前頭葉,側頭葉が傷害されるため,全般的な認知機能低下,性格変化,感情失禁などがみられる.

▼疫学

 1948年以降患者報告数は大きく減少したものの,2010年以降は増加傾向に転じている.2008~2014年の患者報告数は計6,745例で,うち早期顕性梅毒が3,740例,晩期顕性梅毒が399例,無症候が2,567例,先天梅毒が39例であった.

▼分類

 早期梅毒の時期に中枢神経系に梅毒トレポネーマが侵入することで発症する神経梅毒は,無症候性,髄膜血管型,実質型の3型に分類される.

▼診断

 髄液検査で梅毒反応陽性を捉える,梅毒トレポネーマ抗原検査が必要で,FTA-ABSやTPHAテストが用いられる.TPHA indexの算出や,PCR法による梅毒トレポネーマDNAの検出が有用である.蛍光抗体吸収試験や,抗体凝集試験も確定診断に有用である.放射線学的検査ではMRI FLAIR画像やT2強調画像で,皮質下白質に斑状の高信号域を認め,前頭葉,側頭葉を中心に大脳皮質の萎縮,脳室拡大を認めることが多いが非特異的といえる.脳波は,広汎性に基礎律動の徐波化,不規則化,局在性のある徐波の混入,突発波の出現など非特異的といえる.

▼治療

 抗菌薬ペニシリンGを1,800万~2,400万単位/日,10~14日間連日で,4時間ごと/日で静脈内投与する.ほかには,

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