診療支援
治療

(1)血液疾患による認知症
脇田 英明
(藤田医科大学七栗記念病院・内科教授)

 中枢神経系における悪性リンパ腫には,中枢神経系原発悪性リンパ腫,全身性悪性リンパ腫の中枢神経系への浸潤,血管内リンパ腫症,lymphomatosis cerebri,傍腫瘍性神経症候群などがある.

中枢神経系原発悪性リンパ腫(primary central nervous system lymphoma:PCNSL)

 中枢神経系原発悪性リンパ腫はリンパ腫が中枢神経系内にのみ存在するもので,ほとんどが非Hodgkin(ホジキン)リンパ腫の大細胞型B細胞性リンパ腫である.高齢者やHIV感染症例などの免疫機能低下状態に合併することも多い.認知症状に関しては,急性・亜急性の進行性認知機能低下を呈する.

 MRIではT1強調画像で低~等信号,T2強調画像で低~高信号を示す.拡散強調画像では高信号となる.造影MRIでは,均一な造影効果を認める.しかし,悪性リンパ腫のMRI画像所見は多様で,上記以外の所見を示す場合もある.好発部位は,テント上では前頭葉,側頭葉,頭頂葉,後頭葉,基底核,脳室周囲白質,脳梁など広範な部位に発生する.テント下では小脳に好発する.血液検査で血清LDH可溶性インターロイキン2受容体(sIL-2R)の上昇が診断に役立つ.脳脊髄液検査の細胞診で診断がつく場合もあるが,多くの場合,確定診断には生検による病理組織検査が必須で,免疫染色による解析が行われる.必要に応じて,フローサイトメトリーや免疫関連遺伝子再構成PCR法を行う.治療は原則として,高用量メトトレキサート療法を基礎とする化学療法と,引き続く全脳照射による放射線治療を行う.

全身性悪性リンパ腫の中枢神経系への浸潤

 中枢神経以外の組織に発症した悪性リンパ腫の進行により二次的に中枢神経に浸潤したものや初診時に中枢神経系に浸潤しているものである.悪性リンパ腫は,神経系のあらゆるレベル(脳,髄膜,脊髄,神経根,末梢神経

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