診療支援
治療

パーキンソン病
Parkinson disease
髙橋 一司
(東京都立神経病院・院長)

疾患を疑うポイント

●四肢の安静時の振戦,動作が緩慢で振幅が小さい,歩行障害(小刻み歩行や速度の低下)などの症状が緩徐に出現し,進行性に増悪する.

●症状は片側から発症することが多く,病期が進行しても左右差がみられる.

●有病率は加齢とともに増加し,高齢者に多い.

学びのポイント

●神経変性疾患のうち,Alzheimer病についで頻度が高く,運動障害疾患としては最も多い.

●四徴は,静止時振戦,筋強剛・筋固縮,運動緩慢・無動,姿勢保持障害.

●病態の中核は,中脳黒質のドパミン神経細胞の変性であり,対症療法としてL-ドパなどのドパミン補充療法は非常に有効.進行抑制はできないが,L-ドパ治療以後,予後,寿命は大幅に改善した.

●運動症状が中核だが,嗅覚障害,睡眠障害(レム睡眠行動障害,不眠など),気分障害(うつ状態),自律神経症状(便秘,起立性低血圧,頻尿,発汗障害)などの多彩な非運動症状もみられ,進行期には精神・神経症状(幻覚・妄想,認知症など)も出現する.

▼定義

 中脳黒質のドパミン神経細胞の変性を中核とする神経変性疾患である.四徴は,①静止時振戦,②筋強剛・筋固縮,③運動緩慢・無動,④姿勢保持障害で,①~③のうち2つ以上が緩徐進行性に出現し,④は中期~進行期になってからみられる.歩行障害,姿勢異常もみられる.

▼病態

 中脳黒質緻密層のドパミン神経細胞(メラニン含有)が変性・脱落し,残存した神経細胞の細胞質にLewy(レヴィ)小体が出現する.Lewy小体の主成分は,異常にリン酸化されたα-シヌクレインであり,Parkinson(パーキンソン)病は異常なα-シヌクレインの蓄積によって生じるα-シヌクレイノパチーの1つと考えられている.

 Parkinson病で障害されるドパミン神経細胞は線条体に投射し,ドパミンを線条体に放出する.四肢・体幹の随意運動には,大脳皮質から始まり,大脳基底核,視床を介し

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