診療支援
治療

(1)瀬川病(ドパ反応性ジストニア)
Segawa disease (dopa responsiveness dystonia)
瓦井 俊孝
(徳島大学大学院講師・臨床神経科学)

疾患を疑うポイント

●主に小児期に一側の四肢からジストニアが発症,思春期までに全身性となる.

●日内変動があり,夕方に症状が顕在化・悪化する.

●主に下肢に症状(ジストニア)が出現し,歩行障害となる.

●前歩きでは足にジストニアが出現し歩行障害となるが,後ろ歩きやスキップでは症状は出現しない.

●朝に登校するときは問題ないが,夕方に下校する際,足が前に進まなく後ろ歩きやスキップして家に帰るといったエピソードがあれば本疾患を強く疑う.

学びのポイント

●ジストニアは,自動運動のプログラムの障害で生じる(自動運動である前歩きで歩行障害が出現する).

●瀬川病(DYT5,DYT/PARK/GCH1)の病態は,ドパミン生合成過程における酵素の1つであるGCH1(GTP cyclohydrolase 1)をコードしている遺伝子の変異があり,そのために酵素活性が低下している.

●常染色体優性遺伝形式をとるが浸透率は高くなく,一見して孤発例と思われる症例が少なくない.

●症状の日内変動がある.

●少量のレボドパが有効であるため,見逃してはならない疾患である.

▼定義

‍ ドパミン生合成過程における酵素の1つであるGTPシクロヒドロラーゼ1(GTP cyclohydrolase 1,GCH1)をコードしている遺伝子の変異で生じるドパ反応性ジストニア(dopa responsiveness dystonia)である.

▼病態

 ドパミンの生合成において必須なテトラヒドロビオプテリン(tetrahydrobiopterin)の生合成酵素であるGTPシクロヒドロラーゼ1に変異が存在し,そのため十分なテトラヒドロビオプテリンが合成されず,最終的にドパミン量が不足するためにジストニアが発症する.

▼疫学

 報告されている症例数から日本国内には少なくとも100人以上の患者がいるものと推察されている.理由は不明であるが,発症において性

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