診療支援
治療

5 家族性アミロイドニューロパチー
familial amyloidotic neuropathy(FAP)
安東 由喜雄
(長崎国際大学・学長)

▼定義

 線維状構造をもつアミロイドが種々の臓器の細胞外に沈着し,機能障害を引き起こす全身性アミロイドーシスに分類され,末梢神経障害を主体とした全身性の疾患である.

▼病態

 本症では自律神経障害が初発症状となることも多く,起立性低血圧による失神や,便秘,下痢,悪心などの消化器症状,発汗障害,男性では勃起障害がみられる.感覚障害としては,一般に小径線維ニューロパチーのパターンをとり,温痛覚障害が先行し解離性感覚障害がみられるが,手根管症候群で発症する例もある.運動神経障害は感覚障害より2~3年遅れて出現する場合が多い.これらの障害に加え,心伝導障害や,心不全,腎機能障害,硝子体混濁,交代性下痢・便秘,緑内障などが認められる.トランスサイレチン(TTR)遺伝子の点変異や欠失により,異型TTRが産生され,それにより四量体の構造が不安定になり,TTRのミスフォールディングが起こり組織沈着アミロイドが形成されると考えられている.

▼疫学

 現在までに世界で140種類以上のTTRの点変異(あるいは欠失)が明らかにされているが,TTRの30番目のバリンがメチオニンに変異したタイプが圧倒的に多い.100万人に1~3人と報告されているが年々患者数は増加している.国内では熊本県,長野県に集積地があるが,50種類の異なるTTRの変異型が報告されている.これら集積地とは血縁のない主に高齢発症のFAP ATTR Val30Met型の患者が日本各地に報告されてきている.

▼分類

 FAPでは,遺伝的に変異したTTRに加え,ゲルソリンやアポAI,β2ミクログロブリンなどを原因蛋白質とするタイプもあるが,わが国ではTTR型FAPが圧倒的に多い.

▼診断

①生検(腹壁脂肪吸引,胃・直腸,皮膚,口腔粘膜,腓腹神経など)によりアミロイド沈着を証明し,同部が抗TTR抗体で染色されることを確認する.

②血清診断(mass spect

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