疾患を疑うポイント
●日内変動を示す眼瞼下垂や複視,筋力低下などの自覚症状がある.
▼定義
外眼筋や骨格筋の神経筋接合部における神経伝達物質であるアセチルコリンによる刺激伝達が,後天的な自己免疫機序を介して障害されることにより発症する疾患である.
▼病態
アセチルコリン受容体(acetylcholine receptor:AChR)に対する抗体は,AChRに結合し有効に機能するAChRの数を減少させる,あるいは補体の活性化を通じて運動終板のシナプス後膜を破壊するなどの機序を通じて,神経筋接合部での刺激伝達を阻害する.筋特異的チロシンキナーゼ(muscle-specific tyrosine kinase:MuSK)に対する自己抗体は,MuSKと複合体を形成するLDL受容体関連蛋白4(LDL receptor-related protein 4:Lrp4)との相互作用を阻害することで,また抗Lrp4抗体は,シナプス後膜においてAChRが集合体を形成することを抑制することで,効率的な神経筋接合部での刺激伝達を低下させると考えられている.
▼疫学
日本人有病率は人口10万人あたり11.8人で男女比は1:1.7と女性に多い.5歳未満の発症が7%と欧米に比べて多く,それ以降は30~50歳代で発症するが,近年の傾向として65歳以上での高齢発症患者が増加している.
▼分類
治療方針を立てるうえでは,眼筋型と全身型に分類するのが現実的である.外眼筋の症状で初発しても全身型に移行する患者が多いが,2年間経過しても限局している場合には眼筋型に分類される(約20%).全身型の患者のなかでは,50歳未満で発症した早期発症患者と50歳以上で発症した後期発症患者に分ける.さらに,胸腺腫合併型(15~20%)か非合併型かの分類も重要である.
▼診断
➊症状
易疲労性と休息による回復,および症状の日内変動(午前中は
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