疾患を疑うポイント
●筋型糖原病では,筋肉の疲労性や筋力低下などをきっかけとして診断に至ることが多い.糖原病Ⅱ型(Pompe病)の乳児期発症型はフロッピーインファントとして発見され,心肥大,肝脾腫などを認める.
●遅発型(小児型,成人型)では呼吸筋の筋力低下が早期に認められることが多い.
▼定義
グリコーゲンの生成や代謝経路における酵素やトランスポーターの異常によって発症し,組織にグリコーゲンが蓄積する疾患〔第6章の→も参照〕.
▼病態
骨格筋におけるグリコーゲンの蓄積を特徴とするグリコーゲンの代謝障害により発症する.Ⅱ型〔Pompe(ポンペ)病〕,Ⅲ型,Ⅳ型,Ⅴ型〔McArdle(マッカードル)病〕,Ⅶ型(垂井病),Ⅸd型(ホスホリラーゼキナーゼ欠損症),ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)欠損症,ホスホグリセリン酸ムターゼ(PGM)欠損症,乳酸デヒドロゲナーゼAサブユニット(LDH-Aサブユニット)欠損症,アルドラーゼA欠損症,β-エノラーゼ欠損症などがある.運動誘発性に筋症状を示す型と固定性筋症状を示す型とがある.Ⅴ型,Ⅶ型,Ⅸd型などでは,運動誘発性に筋症状を示し,運動不耐,運動時有痛性筋けいれん,ミオグロビン尿症を呈する.一方,筋症状を伴う肝型糖原病である糖原病Ⅲ型,糖原病Ⅳ型では固定性筋症状を示し,持続あるいは進行する筋力低下がみられる.また,高CK血症,尿中・血中ミオグロビン,血清尿酸値の上昇,糖原病Ⅶ型では溶血所見,高ビリルビン血症,網赤血球の増加などを認める.
▼疫学
筋型糖原病のなかではⅡ型(Pompe病),Ⅲ型,Ⅴ型が多い.
▼診断・治療
診断においては,阻血下前腕運動負荷試験で乳酸が上昇しない症例は筋型糖原病を疑う.Ⅱ型(Pompe病)は血液,皮膚線維芽細胞の酵素測定により診断を行う.酵素活性の低下もしくは遺伝子解析による病的変異を確認したものを確定診断例とする