診療支援
治療

神経学的所見のとりかたのエッセンス
神田 隆
(山口大学大学院教授・臨床神経学)

 ここでは神経診察の要点のみを記載する.個々の診察手技については神経診断学の教科書を参照してほしい.

▼意識の診察

 意識の障害には2種類ある.意識水準の低下意識の変容である.意識水準の低下は点数化して評価するのが一般的.日本ではJapan Coma Scale(JCS)が,国際的にはGlasgow Coma Scale(GCS)が好んで用いられる.意識の変容とは,意識水準の低下を背景に種々の精神運動異常を伴うもので,もうろう状態,夢幻状態,アメンチア,せん妄,などといった用語で表現する.

▼知能と高次脳機能の診察

知能の診察

 WAIS〔Wechsler(ウェクスラー) Adult Intelligence Scale〕-Ⅲが知能検査の国際標準.ベッドサイドでのスクリーニングには,日本では改訂長谷川式簡易知能評価スケール(Hasegawa Dementia Scale-Revised:HDS-R),国際的にはMini-Mental State Examination(MMSE)が汎用される.

高次脳機能の診察

 失語,失行,失認の有無を診察する.

1)失語(aphasia)

 発語にかかわる筋肉・末梢神経に異常がなく,意識・知能障害もなく,聴力の障害もないのに言語の理解や表出ができない状態をいう.脳血管障害で失語が起こる際は多くは右麻痺に伴う.

2)失行(apraxia)

 麻痺や運動失調を含む運動障害がなく,しかも行うべき動作を理解しているにもかかわらずこれを行うことができない状態.

3)失認(agnosia)

 視覚,聴覚,触覚などの一次的な感覚路に障害がなく,認知症・意識障害などもないにもかかわらず,上記の感覚路を通じて対象が何であるかを判定できない状態.

▼顔貌と脳神経の診察

 神経筋疾患のなかには,患者の顔貌を一瞥しただけで即座に診断に直結するものが少なくない.Parkinson(パー

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