▼定義
グラム染色で連鎖状の形態を示すグラム陽性球菌である(図11-14図).腸管内の常在細菌叢に含まれる.腸球菌に活性を示さない抗菌薬(セファロスポリン系薬など)の使用により,腸管内の定着が増加する.耐性菌としてはバンコマイシン耐性腸球菌(vancomycin-resistant enterococcus:VRE)が臨床上重要である.VREによるアウトブレイク時には,腸管内などの保菌者の個室隔離,接触予防策が必要となる.
▼分類
代表的菌種はEnterococcus faecalisである.ついでE. faeciumが高率で,約30菌種が存在する.VREの90%以上はE. faeciumである.
▼疫学
尿路感染や胆道感染が原因で二次性血流感染を起こし,血流感染のなかで3~5番目に高率である.VREは米国で検出頻度が高く,E. faeciumの80%はVREとなっており,腸管内保菌者も高率であるが,日本では散発的なアウトブレイクが報告されるにとどまっている.
▼病態
黄色ブドウ球菌や緑色連鎖球菌についで細菌性心内膜炎の代表的菌種である.尿留置カテーテル関連性尿路感染では高率に原因となるが,非留置例では少ない.消化器手術では,腹腔ドレーンより術後高率に検出されるが,ほかのグラム陰性菌などと同時に検出されるため,その病原性に関しては意見が分かれる.肝胆膵手術例における術前胆道ドレナージ施行例では高率に胆汁からEnterococcus属が検出され,手術部位感染原因菌のなかで最も高率である.
▼診断
VREにおいて,院内感染対策の対象となっているのはvanAまたはvanB遺伝子を保有する腸球菌である.vanA遺伝子を有する株はバンコマイシン薬の最小発育阻止濃度(MIC)が≧64μg/mL,テイコプラニン薬では≧16μg/mLであるが,vanB遺伝子を有する株はおのおの16~64μg/mL
関連リンク
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