▼病原菌
ノカルジア属の好気性グラム陽性桿菌であり,土壌,水中,腐木などの自然環境に広く分布する環境常在菌である.80以上の菌種のなかでNocardia asteroides,N. farcinica,N. nova,N. brasiliensis,N. transvalensisなど約30種がヒトに対する病原性を有している.
▼疫学
本菌は世界中の自然環境から普遍的に分離される.発症者の男女比は2~3:1で偏りがあり,なんらかの免疫機能低下をベースとした報告例が過半数を占めるが,一方では健常人,あるいはさほど重篤な基礎疾患を有しない高齢者などの報告例もまれなものではない.
▼病態
病型は肺ノカルジア症,皮膚ノカルジア症および播種性ノカルジア症に区分される場合が多い.体内への侵入門戸は主として肺であり,単一臓器病変としては肺ノカルジア症が40%前後と最も頻度が高い.画像所見は孤立性結節影,空洞形成,浸潤影,膿胸など多彩かつ非特異的である.肺病変形成例のうち半数近くでは免疫不全を背景として血行性に播種性の全身病変を併発する.本菌は中枢神経への親和性が強く,播種性ノカルジア症例の50%近くは脳膿瘍などの中枢神経病変を併発する.その他創部から皮膚に侵入して限局性皮膚病巣を呈する場合があるが,皮膚ノカルジア症の頻度は10%弱とされている.
▼診断
診断上は菌の分離同定が重要であり,グラム染色ではフィラメント状のグラム陽性桿菌構造をとって抗酸菌染色では陽性を呈する.培養には一般細菌よりも時間がかかることが多く,本症が疑われる場合には検査間の培養継続が必要となる.また喀痰検査からの陽性率は低いため,疑わしい症例では積極的に気管支鏡や経皮的生検などを用いて良質の検体を採取する必要がある.
▼治療
第一選択薬はST合剤薬であるが,ほかにセフトリアキソン,イミペネム(シラスタチンとの合剤),アミカシ
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