診療支援
治療

3 放線菌症
actinomycosis
高橋 洋
(坂総合病院・副院長)

▼病原菌

 嫌気性グラム陽性桿菌であるアクチノマイセス属の病原体が本症の原因菌となる.最も病原性が高いのはActinomyces israeliiで,報告例のうち多数を占めているが,その他にA. odontolyticusA. viscosusA. naeslundiiA. gerencseriaeなどがヒトへの病原性を示しうることが報告されている.

▼疫学

 本菌はヒトの口腔,咽頭,腸管,尿路生殖器系などの粘膜表面における常在細菌叢の構成菌種であり,発症に特に地域的な偏りはない.男性の発症例が多く,免疫不全の存在がリスクファクターとなるが,健常人における発症例も少なくない.一方では誤嚥,抜歯,異物の存在,ドレナージ不全などの局所的な問題が発症の重要な誘因となる場合が多い.

▼病態

‍ 亜急性~慢性的に進展する局所の膿瘍形成~肉芽腫性の炎症が本症の本体である.罹患部位としては頭頸部領域が最も高頻度で全体の過半数を占めており,腹部骨盤領域は20%台,胸部領域は10%台と推定されている.また報告例の大部分は実際にはほかの嫌気性菌などとの混合感染例であり,単独感染はまれであるものと考えられている.頭頸部放線菌症は顎下部に好発し,比較的急性に進展して潰瘍や瘻孔を形成する症例,緩徐に進展する頸部皮下腫瘤など多彩な病像を呈する.胸部放線菌症は腫瘤影,結節影をきたす症例が多いが,浸潤影,胸水,空洞形成など多彩な画像所見を呈し,診断には難渋する場合も少なくない.腹部放線菌症は回盲部が好発部位となることが知られている.また骨盤放線菌症に関しては,子宮内避妊具の使用例が発症のハイリスクグループとして有名である.

▼診断

 病巣から直接的に菌を分離できれば確定診断となるが,本菌は嫌気性菌であり増殖も遅いことから長めに培養期間を設定しないと見逃されやすい.採取検体のグラム染色では時に分岐のあるフィラメント

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?