診療支援
治療

6 職業性アレルギー
occupational allergy
石塚 全
(福井大学教授・内科学(3)分野)

▼定義

‍ 職業性喘息とは,特定の労働環境で特定の職業性物質に曝露されることにより発症する喘息である.職業と関連なく喘息を発症した患者が職場での環境因子が誘因となって喘息が増悪する場合は作業増悪性喘息とよび,厳密には職業性喘息には含めない.

‍ 職業性過敏性肺炎とは,作業環境に浮遊する真菌や細菌,動物の排泄物や体成分などの有機物質,無機化学物質を反復吸入することで経気道的な感作が成立し胞隔炎を起こす疾患である.

‍ 職業性鼻炎は職場環境に存在する物質が原因で,間欠的あるいは持続的に起こるくしゃみ,鼻水,鼻閉を特徴とする炎症性疾患である.

 その他,職業と密接に関連した皮膚疾患を職業性皮膚疾患とよぶ.

▼病態

 職業性喘息の原因となる職業性感作物質の主なものを表12-9に示す.蛋白質などの高分子量物質と化学物質などの低分子量物質に大別する場合が多い.高分子量物質ではこれらの物質が完全な抗原として作用し,抗原特異的IgEの産生を誘導する.一方,低分子量物質においても曝露から喘息発病までの潜伏期間が存在することより,免疫学的機序が関与していることは間違いない.低分子量物質による感作においてもプラチナ塩,トリメリット酸無水物,無水フタル酸などはハプテンとして抗原特異的IgEを誘導する.イソシアネートやプリカト酸(米杉)に特異的なIgEが産生される場合もあるが,一般に低分子量物質の感作による職業性喘息においてIgEの病態への関与は明らかではない.IgE非依存性免疫学的機序の詳細は不明である.アトピー素因は高分子量物質感作による職業性喘息の発病に関連するが,強い予測因子ではない.

 職業性過敏性肺炎としては,好熱性放線菌による農夫肺,キノコ栽培所に浮遊するキノコ胞子,培地に増殖した細菌,真菌によるキノコ栽培者肺,自動車塗装業,プラスチック加工業などでのイソシアネートが原因の塗装工肺などが挙げられる

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