診療支援
治療

5 全身性硬化症(強皮症)
systemic sclerosis(scleroderma)
桑名 正隆
(日本医科大学大学院教授・アレルギー膠原病内科学分野)

疾患を疑うポイント

●中年女性に好発するが,小児~高齢者のいずれの年齢でも発症しうる.

●初発症状として寒冷や緊張により誘発される可逆性の手指の白→紫→赤の色調変化(Raynaud現象)が最多.

学びのポイント

●皮膚や肺,心,消化管など内臓諸臓器の過剰な線維化,血管障害,自己抗体産生など免疫異常を特徴とする膠原病の1つ.

●症状は患者ごとに多彩.皮膚硬化範囲によりびまん皮膚硬化型と限局皮膚硬化型に分類され,これら病型で臓器障害や予後,死因が異なる.

▼定義

 手指から中枢に向かって拡大する皮膚硬化を主徴とし,血管障害によるRaynaud(レイノー)現象や爪郭毛細血管異常を伴う慢性疾患.

▼病態

 遺伝的素因に加えて有機溶媒や粉塵への曝露が蓄積して発症に至る多因子疾患.血管内皮傷害とそれに引き続く修復機転が十分に機能せず,血小板の活性化に続いて組織へのT細胞,B細胞,マクロファージの侵入により慢性炎症を引き起こす.さらに小胞体ストレス,低酸素などの刺激も加わり,線維芽細胞,骨髄から動員された間葉系幹細胞,血管内皮細胞などが筋線維芽細胞へと分化・転換してⅠ型コラーゲンなど細胞外マトリックスを過剰に産生することで正常構造を改変する.

▼疫学

 わが国の患者数は4万人,発症率は10万人あたり年間2人と推定されている.小児から高齢者まで幅広い年齢層でみられるが,好発年齢は40~60歳代で男女比は1:8と女性に多い.

▼分類

 経過中にみられる最も広い皮膚硬化範囲による分類が汎用されている.肘あるいは膝を越えて近位まで広がるびまん皮膚硬化型,肘と膝より遠位と顔面にとどまる限局皮膚硬化型に分ける.病型間で皮膚硬化の進展,臓器障害の種類と出現時期が大きく異なる(図13-6).びまん皮膚硬化型では皮膚硬化の進行期に腎クリーゼ,うっ血性心不全をきたすことがあり,皮膚硬化がピークに達する頃に消化管や肺の線維化が顕性化

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