▼定義
2012年に血管炎を再定義するChapel Hill国際会議が開かれ,「中小動脈の壊死性血管炎で,細動脈・毛細血管・細静脈の血管炎を伴わず,抗好中球細胞質抗体 (anti-neutrophil cytoplasmic antibody:ANCA)と関連のない疾患」と定義された〔第9章の→も参照〕.
▼病態
ほかの小型血管炎の一部にみられるANCAが本症においては陰性であり,病因についてはほとんどわかっていない.しかし,B型肝炎ウイルス感染後にHB抗原とそれに対する抗体の免疫複合体が血管に沈着することで類似の病態が出現することから,ウイルス感染などを契機に補体の活性化を通して血管壁の透過性の亢進が起こり,そのため血管中膜への免疫複合体の沈着やフィブリノイド壊死をきたすのではないかと考えられている.病理組織学的には,中小動脈の血管炎がみられ細動脈,細静脈,毛細血管は罹患しないことが特徴で,その点で顕微鏡的多発血管炎(microscopic polyangiitis:MPA)と区別される.歴史的にはANCA関連血管炎はPANから分離独立した概念として確立されていった.主な病理像は壊死性血管炎であり,血管中膜のフィブリノイド変性および壊死を伴う.
▼疫学
本症のわが国における患者数について確かなデータは存在しないが,厚労省の難治性血管炎分科会が行った全国調査から推計するとわが国におけるPAN患者数はかなり少なく,有病率は100万人あたり33人以下と推計され,PAN発症時の平均年齢は55歳,男女比は3:1であった.
▼診断
➊臨床症状
臨床症状は,全身の炎症に伴う症状と,各臓器の炎症および虚血・梗塞に伴う症状とに大きく分けられる.
1)全身症状
全身の炎症に伴う38℃以上の発熱,体重減少,後述の腎臓における虚血を原因とするレニン・アンジオテンシン系の亢進による高血圧などがみられる.
2)
関連リンク
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