診療支援
治療

1 痛風
gout
谷口 敦夫
(東京女子医科大学教授・膠原病リウマチ内科学)

疾患を疑うポイント

●高尿酸血症のある成人男性に好発する.

●下肢,特に足趾~足関節の発赤を伴う急性単関節炎.

●メタボリックシンドロームの合併が多い.

▼定義

 関節内に沈着した尿酸塩結晶によって生じる関節炎を主徴とする疾患である.高尿酸血症を生化学的基盤とし,メタボリックシンドロームの合併が多い〔第6章のも参照〕.

▼病態

 尿酸は生理的条件下では尿酸一ナトリウム(尿酸塩)として存在する.その溶解度は6.8~7.0mg/dLとされている.

 血清尿酸値が7.0mg/dLを超える場合を高尿酸血症という.高尿酸血症の状態で,局所の温度や組織変性などの条件が加わり関節内に尿酸塩結晶が析出・沈着する.

 尿酸塩結晶が沈着巣から剝脱することにより炎症が惹起される.これにはNLRP3インフラマソームが関与し,その結果インターロイキン(IL)-1βが産生され,炎症の中心的役割を担う.

▼疫学

 日本では95%以上が男性である.男性での有病率は約1%で,増加している.20歳代の発症も珍しくないが,中年以降の発症が多い.

▼経過

 高尿酸血症は成人男性の20~30%に認められる.無症候性高尿酸血症(痛風を発症していない高尿酸血症)の25%程度にはすでに関節内に尿酸塩結晶の沈着があり,痛風はこの集団の一部から発症する.

 関節内に沈着した尿酸塩結晶が剝脱すると急性痛風関節炎が発症する.初期には自然消退するが,多くは再発し経過とともに頻度が増え慢性化し,痛風結節が生じるようになる(慢性結節性痛風関節炎).

▼診断

 特徴的な臨床経過や診察所見があり,病変局所(関節液あるいは皮下結節)から尿酸塩結晶が証明されれば痛風と診断される.臨床経過や診察所見のみから診断される場合が多いが,鑑別困難な場合には結晶を同定すべきである.

臨床症状と所見

 膝関節から遠位の関節に急性単関節炎が発症する.特に母趾中足趾節(metatarsoph

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