診療支援
治療

3 ベーチェット病
Behçet's disease
桐野 洋平
(横浜市立大学大学院講師・血液・リウマチ・感染症内科)

疾患を疑うポイント

●発作性・再発性の口腔内・口唇のアフタ性潰瘍,皮膚病変,ぶどう膜炎,外陰部潰瘍を認める.

学びのポイント

●20~40歳代が好発年齢であり,性差はない.

●眼(虹彩炎・網脈絡膜炎など),中枢神経(特に脳幹),血管(動・静脈両方の血栓・炎症),腸管(回盲部深掘れ潰瘍),関節(大関節主体)などのさまざまな部位に多彩な病変をきたす.

●時にぶどう膜炎による失明,腸管病変による消化管穿孔などの重篤な病態を呈する.

●生物学的製剤など治療法の進歩により,失明に至る患者は減少傾向にある.

▼病態

 病態に関与する環境因子としては細菌・ウイルスなどの微生物,喫煙が知られている.遺伝素因としてはHLA-B51とHLA-A26が重要である.ゲノムワイド関連解析からIL-23RERAP1などの遺伝子との関連が明らかとなり,強直性脊椎炎や乾癬との共通性が示された.炎症にはCD8 T細胞を中心とした獲得免疫と,好中球を中心とした自然免疫の両者が重要である.

▼疫学

 中東などシルクロード沿いに患者が多く,欧米では少ない.わが国の有病率は10万人あたり約15人である.近年わが国では完全型が減少し,腸管型が増加している.眼病変や神経型は男性に多い.

▼分類

 アフタ性潰瘍(図13-17),皮膚病変(結節性紅斑,毛囊炎様皮疹,血栓性静脈炎),眼病変,外陰部潰瘍すべてを有する患者は完全型と分類される.特殊型として腸管型,神経型(急性型と慢性進行型に分類),血管型がある.その他副症状として関節炎,精巣上体炎がある.

▼診断

 特異的な徴候・検査・病理所見は存在せず,厚生労働省の診断基準を用いる(表13-22).Crohn(クローン)病などの類似した症状を呈する疾患を除外する.HLA-B51や針反応は参考所見とされ,針反応は本疾患に比較的特異的であるが,わが国での陽性率は低い.髄液IL-6値は慢性進行型の診断に

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