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4 リウマチ性多発筋痛症,RS3PE症候群
polymyalgia rheumatica(PMR),remitting seronegative symmetrical synovitis with pitting edema
杉原 毅彦
(東京医科歯科大学特任准教授・生涯免疫難病学)

▼定義

 リウマチ性多発筋痛症(PMR)は肩関節と股関節の関節外の炎症を特徴とする関節疾患,RS3PE症候群は末梢関節における関節外の炎症,手指の腱鞘滑膜炎を特徴とする関節疾患である.PMRの末梢関節症状とRS3PE症候群の症状は類似し,両疾患は同一のスペクトラムにあるとする考え方もある.

▼病態

 両肩関節の上腕二頭筋の腱鞘滑膜炎,三角筋下滑液包炎,肩甲上腕関節滑膜炎,股関節では大転子部,坐骨結節や恥骨結合,寛骨臼に関節包外の炎症病変,頸椎,腰椎の棘突起間の滑液包炎を特徴とする.PMRに伴う末梢関節症状とRS3PE症候群は,手指あるいは足趾の伸筋腱と屈筋腱の腱鞘滑膜炎と周囲の反応性浮腫を特徴とする.関節リウマチが関節滑膜炎を特徴とするのに対してPMRは関節外の炎症を特徴とする点が異なる.PMRとRS3PE症候群は自己抗体が産生されず,獲得免疫系の異常よりも自然免疫系の活性化に伴うインターロイキン(interleukin:IL)-6などの炎症性サイトカインの増加を伴う炎症疾患と考えられている.

▼疫学

 通常50歳以上の中高年に発症し,平均発症年齢は70~75歳,女性の頻度は50~70%,PMR発症時あるいは経過中に20%前後で巨細胞性動脈炎を合併する.PMRで肩関節病変は必発で,股関節病変は50~70%程度認める.肩,股関節以外に末梢関節症状を認めるケースが20~30%程度存在する.

▼診断

 PMRの明確な診断基準はなく,疫学研究目的で作成された分類基準が存在する.分類基準は典型的なPMRの患者集団を集めるために使用される基準であるため,診断の参考となるが,同様の症状を呈する疾患を除外する必要がある.表13-23に分類基準に採用されている診断の目安となる項目と,表13-24に除外が必要な疾患を挙げる.症状が典型的でない場合は,悪性腫瘍や慢性感染症などの慢性炎症を認める疾患の除外も

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