診療支援
治療

9 ウェーバー-クリスチャン病
Weber-Christian disease(WCD)
井川 健
(獨協医科大学主任教授・皮膚科学)

▼定義

 全身性の炎症を伴う脂肪融解性脂肪織炎を再発性に繰り返す疾患である.1925年にWeberが,1928年にChristianが報告して以来,relapsing febrile nodular nonsuppurative panniculitisと命名されていたが,1936年にBrillが初めて,Weber-Christian病(WCD)という病名を用いた.原発性のものをWCDとよぶが,実際の臨床現場では,基礎疾患の有無など,必ずしもはっきりしないものも多い.なお,基礎疾患などが明らかなものをWeber-Christian症候群とよぶこともある.

▼病態

‍ 全身性の炎症を伴う脂肪融解性脂肪織炎である.原因は不明であるが,免疫抑制療法が有効であることや,可溶性インターロイキン2受容体(soluble interleukin-2 receptor:sIL-2R)が高値となることなどから,T細胞系の異常が基盤にあることが示唆される.また,脂肪組織に対する自己免疫的機序の存在も考えられている.

▼疫学

 わが国では年間数例以下の発症と考えられる.中高年の女性に多いとされているが,全年代の男女に起こりうる.

▼分類

 分類はない.ただし,さまざまな要因や基礎疾患により,同様の臨床症状を呈することから,「症候群」と考え,それぞれの要因に即したサブグループ化と,それぞれのグループに応じた疾患管理を考慮する必要がある.

▼診断

 全身性の炎症反応と,組織学的に脂肪融解性脂肪織炎の各ステージの像を証明する.鑑別診断がきわめて重要である.すなわち,膵炎,全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)をはじめとする膠原病,悪性リンパ腫などの存在があれば,狭義ではWCDではない.

▼治療

 確立した治療法はないが,対症療法的に副腎皮質ステロイドの全身投与が行われる.

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