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2 家族性血球貪食性リンパ組織球症
familial hemophagocytic lymphohistiocytosis(FHL)
和田 泰三
(金沢大学教授・小児科学)

▼定義

 細胞傷害性顆粒やその放出機構の先天的な異常のため,細胞傷害性T細胞やNK細胞の機能不全が起こり,血球貪食性リンパ組織球症(hemophagocytic lymphohistiocytosis:HLH)を発症する疾患である〔第8章「血球貪食性リンパ組織球症」の項()も参照〕.常染色体劣性遺伝形式を基本とする.

▼病態

 HLHは,高熱,脾腫,汎血球減少,肝障害,凝固異常などを呈し,組織球の増殖と血球貪食像が骨髄,リンパ節,肝臓,脾臓などでみられる症候群である.病態の中心は,細胞傷害性T細胞やマクロファージの異常活性化と過剰な炎症性サイトカイン産生である.HLHは,遺伝的要因による原発性と感染などに続発する二次性に分かれ,原発性HLHの代表的疾患がFHLである.FHLでは,細胞傷害活性の低下によりウイルス感染細胞などが排除されず,細胞傷害性T細胞やマクロファージの異常活性化と高サイトカイン血症が引き起こされる.

▼疫学

 発生頻度は出生5万~30万人に1人で,FHL2が最も多い.FHLの7~8割が1歳までに発症する.

▼分類

 FHL2(perforin欠損症),FHL3(UNC13D/Munc13-4欠損症),FHL4(Syntaxin11欠損症),FHL5(STXBP2/Munc18-2欠損症)に分類される.FHL1は責任遺伝子が判明していない.

▼診断

 1歳未満のHLH発症や治療抵抗例,再燃例では原発性HLHの可能性を考慮する.FHLの原因蛋白の発現や脱顆粒能を検討し,遺伝子解析によりFHLと診断する.

▼治療

 HLH急性期では,副腎皮質ステロイド,シクロスポリン,エトポシドなどにより炎症の沈静化をはかる.FHLの診断後は,根治療法の造血幹細胞移植を行う.

▼予後

 骨髄非破壊的前処置を用いた造血幹細胞移植で良好な成績が海外で得られている.わが国では移植後の10年生存率は65

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