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1 先天性好中球減少症
congenital neutropenia
小林 正夫
(日本赤十字社中四国ブロック血液センター・所長)

▼定義・分類

 生下時からの慢性好中球減少(末梢血好中球の絶対数が500/μL以下)と易感染性を示す疾患群〔第8章「好中球減少症,無顆粒球症」の項()も参照〕.すでに10数種類以上の責任遺伝子が同定され,慢性好中球減少以外に特徴的な臨床症状を有する症候群も含まれている.特に,好中球絶対数が200/μL以下を呈する重症先天性好中球減少症では骨髄像で,前骨髄球,骨髄球での成熟障害がみられる.代表的なものについて表13-30に示す.

▼疫学

 わが国での先天性好中球減少症の報告登録数は100例前後であり,100万出生に1~2人の割合と推測されている.

▼病態

 先天性好中球減少症全体からみると,ELANE異常が半数,HAX1異常,糖原病Ⅰb型,Shwachman-Diamond(シュワックマン-ダイヤモンド)症候群の頻度が多い.HAX1異常はてんかん,発達障害などの神経系の合併が多く,かつてはKostmann(コストマン)病とよばれていた.糖原病Ⅰb型では低血糖,肝腫大,成長障害を,Shwachman-Diamond症候群では膵外分泌異常,骨格異常を合併する.その他,先天異常を合併するものが多い.

▼診断

 末梢血好中球絶対数が500/μL以下の慢性好中球減少を3か月以上継続して認めた場合には,図13-28に示すアルゴリズムで診断を進めていく.1週間隔での好中球数の測定から,先天性好中球減少症と周期性好中球減少症の鑑別は容易である.骨髄検査での好中球系前駆細胞の成熟障害の有無,形態異常,染色体検査などを行い,最終的には遺伝子解析から確定診断を行う.

▼治療

 感染症対策が重要で,スルファメトキサゾール/トリメトプリム(ST)合剤の定期的投与,必要であれば抗真菌薬投与,口腔ケアが必要である.約90%の症例では好中球増加因子である,G-CSF投与で好中球増加が認められるので,感染症のコントロー

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