診療支援
治療

【1】複合免疫不全症
combined immunodeficiency
谷内江 昭宏
(金沢大学附属病院・医療安全管理部特任教授)

疾患を疑うポイント

●繰り返す重症感染症,難治性の湿疹,遷延する下痢,体重増加不良.

●ニューモシスチス,サイトメガロウイルス,カンジダなどの日和見感染症.

●乳児期での発症が多いが,小児期~成人期で診断される例もある.

学びのポイント

●複合免疫不全症はなんらかの遺伝子異常を背景とした,予後不良な疾患である.

●希少疾患であるが,免疫能の検査や遺伝子解析を行うことにより早期診断が可能である.

●早期治療介入により,予後の著しい改善が期待される.まずは「疑う」ことが重要である.

▼定義

 B細胞による抗体産生(液性免疫)ならびにT細胞によるヘルパー活性,キラー活性や制御能など(細胞性免疫)の低下を特徴とする免疫不全症.

▼病態

 T細胞数の減少,血清免疫グロブリン値の低下を認める.B細胞の絶対数は正常な症例もある.細菌,ウイルス,真菌など多様な病原体による感染症を発症する.重症の皮膚炎,難治性の下痢,ならびに体重増加不良を認める例が多い.乳児期発症例は特に重篤であり,重症複合免疫不全症(severe combined immunodeficiency:SCID)と称される.

 リンパ球の分化にかかわる分子の欠損によって起こることが多く,多様な遺伝子変異が関与する.なかでも,リンパ球の代謝にかかわるアデノシンデアミナーゼ(adenosine deaminase:ADA)の欠損(ADA 欠損症),T細胞やNK細胞の分化に必須となるサイトカインであるインターロイキン(interleukin:IL)-2,IL-4,IL-7,IL-9ならびにIL-15などの受容体の共通構成分子であるγc鎖の異常(X連鎖SCID:X-SCID)や,T細胞ならびにB細胞抗原受容体遺伝子再構成にかかわるRAG1/RAG2遺伝子の変異などはSCIDの原因として重要である.

▼診断

 疑われた症例では,末梢血リンパ球数ならびに血清免疫グ

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