診療支援
治療

3 排泄の促進
promotion of the excretion
伊関 憲
(福島県立医科大学教授・救急医療学講座)

▼毒物の排泄促進

 体内に取り込まれた中毒起因物質は,血液中や消化管内から積極的に取り除く必要がある.そこで行われるのが,「活性炭の繰り返し投与」「尿のアルカリ化」「血液浄化法」である.

 以前広く行われていた強制利尿(forced diuresis)とは,1時間あたり250~500mLの大量輸液とともに,フロセミドなどの利尿薬を併用することで中毒起因物質の排泄を促すという考え方である.しかし,この強制利尿は効果がなく,心不全や電解質異常などのリスクがあることから最近では施行されていない.脱水状態にある急性中毒患者に適切な投与量の輸液を行うことがむしろ重要と考えられている.

 「活性炭の繰り返し投与」「尿のアルカリ化」「血液浄化法」はその治療原理から,対象となる中毒起因物質の適応を考えて施行しなければならない.本項では治療原理をふまえて解説する.

▼活性炭の繰り返し投与(multiple-dose activated charcoal:MDAC)

治療原理と適応

‍ 活性炭は,木炭,石炭,植物繊維などを600~900℃で加熱してできた炭化物を,ガスや薬剤で活性化した微粉粒炭化物である.活性炭には多数の吸着孔があり,中毒起因物質を吸着する.この活性炭の吸着は可逆的であり,1分以内に始まり,ゆっくりと離脱する.

 活性炭の吸着に関する因子としては中毒起因物質の分子量,疎水性,酸・塩基,イオン化能,酸解離定数(pKa)が挙げられる.また消化管内の環境も影響し,食物残渣の有無やpHも関与する.

 活性炭が吸着する中毒起因物質には,アスピリン,アセトアミノフェン,バルビタール,フェニトイン,バルプロ酸などがある(表14-11).また吸着しない物質としては強酸・強アルカリ,アルコール類,シアン化合物などがある(表14-11)

 活性炭の繰り返し投与では,体内にすでに吸収された中毒起因物質および

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