▼概説
酸素欠乏症は労働安全衛生法(酸素欠乏症等防止規則)により,「酸素欠乏の空気(著者注:酸素濃度が18%未満)を吸入することにより生ずる症状が認められる状態」と定義される.なお,臨床現場でよくみる低酸素血症は,原因はなんであれ結果として動脈血内の酸素分圧が60mmHg以下の状態のことをいう.
▼発症のメカニズム
通常ヒトの呼気の酸素濃度は16%程度である.したがって,それより酸素濃度が低い環境では,呼吸をすればするほど肺胞でのガス交換の際により低い酸素濃度に置換され,低酸素血症が増悪する.酸素濃度が低い環境には,①酸素が消費される空間,②酸素以外の気体が増加する空間がある.前者には,1)物の酸化(鉄製タンク,井戸),2)穀物,果菜,木材などの呼吸(穀物,果実の熟成庫,サイロ),3)有機物の腐敗,微生物の呼吸(汚水タンク,マンホール,醤油や酒のタンク),4)密閉環境(冷蔵庫,タンク)があり