【疾患概念】
肺動脈内で血栓による塞栓を生じた状態が,肺血栓塞栓症(pulmonary thromboembolism;PTE)である.約90%は下肢や骨盤内の静脈で形成された血栓が血管壁から遊離・進展することにより,肺動脈内に塞栓を生じると考えられている.PTEは急性PTEと慢性PTEに分けられるが,一般に整形外科領域で対象となるのは,新鮮血栓が肺動脈を閉塞する急性PTEである.小さな血栓による小塞栓であれば無症候であるが,大きな血栓による塞栓では症候性のPTEとなり,ショック状態となった場合は致死率が非常に高い.かつてわが国では,周術期に長期臥床を強いてもPTEを発症することはほとんどなく,PTEは欧米の疾患と思われていた.しかし,現代においては,PTE発症は決して珍しいことではない.PTEを含む静脈血栓塞栓症に関しては,日本整形外科学会による「症候性静脈血栓塞栓症予防ガイドライン」な