診療支援
治療

MRSAによる感染症
Characteristics of MRSA infections
山田 浩司
(中野島整形外科 院長〔川崎市多摩区〕)

1.MRSA感染の現状と予防

 入院患者から分離される黄色ブドウ球菌のうち,MRSA(methicillin-resistant Staphylococcus aureus)の占める割合は減少傾向にある.しかし,2018年の厚生労働省院内感染対策サーベイランス(JANIS)年報で,整形外科手術のSSI(surgical site infection)起炎菌はどの術式も黄色ブドウ球菌が最多であり,そのうち33~42%がMRSAであった.耐性菌のなかで最も分離頻度が高い整形外科の主要SSI起炎菌であり,感染対策上重視すべき病原体であることに変わりない.特にMRSA感染は難治性感染症の原因となるだけでなく,院内アウトブレイクを起こす点で注意が必要である.

 MRSA感染対策で重要なのはMRSAの伝播防止であり,保菌者や感染者に対し接触感染予防策の実施が必要となる.しかし,すべての保菌者をスクリーニングすることは難しく,手指衛生など標準予防策の徹底がMRSA伝播を防ぐ有効な手段となる.WHOの推奨する5つのタイミングの遵守,環境整備,実施状況の把握と現場へのフィードバックも重要である.また,抗菌薬の不適切使用で保菌者の感染リスクを高めないことも重要であり,組織的にantimicrobial stewardshipに取り組むことが望ましい.

 手術患者ではMRSA保菌者に対する抗MRSA薬の予防投与〔標準的予防薬にバンコマイシン(VCM)を併用する〕や,術前鼻腔・全身除菌が推奨される.鼻腔除菌はムピロシンが,全身除菌はクロルヘキシジンが推奨される.2016年に政府が提唱した薬剤耐性(AMR)対策アクションプランでは,黄色ブドウ球菌に占めるMRSAの割合を2020年に20%以下にする目標が掲げられ,整形外科領域では手術患者のMRSA感染予防が重要である.


2.抗MRSA薬の種類

 わが国で認可

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