【疾患概念】
壊死性筋膜炎は,皮下組織,特に筋膜での急速な病原体感染の拡散を伴う生命を脅かす軟部組織感染症である.
【頻度】
世界における壊死性筋膜炎の発症率は10万例中0.4例程度と低いが,死亡率は20%以上ときわめて高い.
【病態】
壊死性筋膜炎は,皮膚などにおける切創,虫刺され,注射や軽微な外傷,熱傷などを契機とした患部への病原微生物の感染,もしくは毒素性ショックや敗血症などに付随して発症することが多い.局所的な臨床症状として,四肢,会陰・陰嚢部,腹部における紅斑,広範囲の浮腫,水疱,潰瘍,壊死を認める.また,全身症状として高熱,関節痛,せん妄,ショック,多臓器不全などの症状を呈する.症状の進行はきわめて速く,患部における壊死の急速な拡大と知覚低下を伴うことが多い.
壊死性筋膜炎の原因となる病原細菌の種類から以下の4つに分類される.
①typeⅠ:複数の微生物による混合感染により発症するもの.壊死性筋膜炎全症例の55~90%と最も多く,罹患者の多くが糖尿病などの基礎疾患を有するとされる.
②typeⅡ:A群レンサ球菌などの化膿レンサ球菌や黄色ブドウ球菌の単独感染により発症するもの.
③typeⅢ:クロストリジウム属,ビブリオ属,エロモナス属の各細菌の単独感染によって発症するもの.
④typeⅣ:真菌感染により発症するもの.多くはカンジダ属真菌の感染が原因とされる.
問診で聞くべきこと
患部の出現時期とその原因,患部の痛みの状態,全身状態,症状の変化,基礎疾患の有無とその疾患名などを聞きとる.
必要な検査とその所見
LRINECスコア(CRP,白血球,Hb,血清Na,血清Cr,血糖の6項目を測定,スコア化し,13点満点中6点以上を壊死性筋膜炎とする)を調べる.壊死組織中の迅速病理組織診断により確定診断を行う.また,起炎菌特定のために患部から採取された組織や膿,あるいは血液などの
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