診療支援
治療

骨・軟部腫瘍診断の手順
The diagnosis of bone and soft tissue tumors
山本 哲司
(香川大学 教授)

 骨・軟部腫瘍の診断の手順としては,問診と理学所見などの臨床所見,各種画像検査所見および病理組織所見を総合的に判断して行う.侵襲の少ない検査から順に進め,最終的に病理医とよく議論したうえで確定診断を行う.


1.骨腫瘍の診断

【1】臨床所見

 患者の年齢,性別,罹患部位,疼痛の有無および程度と経過,外傷歴,家族歴などを参考にする.多くの骨腫瘍はわずかに男性に好発するが,骨巨細胞腫は女性に多い.診断にあたり年齢は重要で,3歳以下に多いのは神経芽細胞腫の骨転移であり,その他良性骨腫瘍および骨肉腫を含む悪性骨腫瘍とも5~30歳ぐらいまでの若年者に多い.中高年に多い骨腫瘍としては転移性骨腫瘍や多発性骨髄腫が最も多く,原発性腫瘍としては軟骨肉腫,脊索腫などが挙げられる.

 安静時の疼痛は良性骨腫瘍の場合はないことが多く,骨軟骨腫などの場合は周囲組織との機械的刺激によって運動時の疼痛を生じることがある.病的骨折によって発症しやすい良性骨腫瘍は,線維性骨異形成症,単発性骨嚢腫および内軟骨腫などである.これらの疾患は骨折前に無症状にもかかわらず骨内病変が増大し,骨脆弱性を生じているためである.また長管骨への転移性骨腫瘍も病的骨折を生じる.類骨骨腫は持続的な疼痛や夜間痛を生じることで知られており,非ステロイド性抗炎症薬が有効である.また悪性骨腫瘍の疼痛は数週間から数か月に及ぶ持続的で軽快することのない疼痛で,しばしば夜間痛を訴える.

【2】単純X線検査

 骨腫瘍を診断するうえで最も重要な検査である.脊椎や扁平骨に発生しやすい骨腫瘍と長管骨に好発する骨腫瘍がある.Langerhans細胞組織球腫は脊椎と扁平骨に多く,骨芽細胞腫は脊椎の後方成分に発生しやすい.

 好発部位は骨腫瘍の種類によって長管骨の骨端部,骨幹端部および骨幹部に分類される.骨腫瘍の多くは骨幹端部に発生するが,骨巨細胞腫と軟骨芽細胞腫は骨端部に

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